「ロゼ先輩」
「なーに、レギュラス」
「好きなんです」
目の前にいるこの少年は、今なんと?
「なにが?好きなお菓子を言っても私買ってあげないからね?!」
「ロゼ先輩が、です」
あれ、お菓子じゃないの?私?私が好き?どういう意味だろう。
「あはは…なにそれ、今はやってたりするの?」
全く、今の時代は変な流行が増えたなぁと身にしみる…。
そんな私も今の時代の人間であることに変わりはないのだが。
「ロゼ、ロゼ!」
「んあっ?!」
目の前には、見慣れた友達の顔。手には毛布。
今のは夢だったんだ。昨日レギュがあんなこと言うから。
私はローブを肩に引っ掛け、談話室へと下りる。
「夢にまで出てくるなんて、最悪」
「今日はどんな夢だったんですか?」
「のわっ」
昨日の件の犯人。レギュラス。よくもこう抜け抜けと私の前に。
「で、先輩。昨日の件考えてくれましたか?」
ねぇ?と私の前に回り込むレギュ。身のこなしが軽いなちくしょう。
どうせ私にはかわせないですよだ!
「ロゼ先輩は、僕が嫌いですか?」
「……」
ニコニコと意地の悪い笑みを浮かべたかと思えば、次の瞬間にはこれだ。
うるうる視線で私の心を射抜く。
こんな所にいないで、役者にでもなったら良いと思う。
「ねぇ先輩?」
そうしている間にも徐々に距離を縮めてくる。
もう、私とレギュの間の距離は1センチ。いやもうそんなに無いかもしれない。
レギュのことは嫌いじゃない。むしろ「大」が付くほど好きだ。
唇が重なる寸前。ぎゅっと目をつむる。
が、いくら経っても何の変化も無い。恐る恐る目を開けると、やはり目と鼻の先にレギュの顔が。
そしてその手は私の肩をしっかりと捕まえていた。
「今のはOKってことで良いんですか?」
だって嫌だったら逃げ出すでしょうから。と付け足す。
無邪気な笑みに心臓がどきりと跳ねる。
嗚呼やっぱり…この子には敵わないのかもしれない。
人生はリセットできない
(して欲しかったんですか、キス)(違っ!)
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