冷たい空気の中、はぁっと白い息が宙に浮かぶ。
「まさかこんな風に会うなんてね」
決して可笑しくて笑う雰囲気では無いはずなのに、私はふっと笑みを零す。
自分でも本当に不思議だ。
「嗚呼、ロゼ…俺様はずっとお前を探していた」
探していた…?何の為にそんなこと。
私を自らの手で殺めるためだろうか。だとしたら私も同じ。
「えぇ、私も貴方を探していた」
動揺を隠してきっと前方を見据える。
「この手で葬る為にね…」
するとリドル、いやヴォルデモートの表情が歪む。
今更なぜそんな顔をするのか分からない。この展開は充分予想出来たはずだ。
「ロゼ、俺様はお前を愛している」
「でも私は“ヴォルデモート”を愛してないの」
一人称と容姿が変わった以外、何も変わっていない“リドル”だけど私はもう愛せない。
「ねぇ、覚えてる?学生時代、リドルが私にしてくれた話」
私は彼の返事を待たずに話し始める。
◇
「ねぇリドルー!これなに?」
「どれ?ちょっと見せて」
私は先程まで読んでいた本を、リドルに差し出す。
彼は、その文面を見て少しぎょっとしたようだった。
「これは六道輪廻っていうんだよ」
「ろくどう、りんね?」
そう。と短く付け足して私に本を返す。
「それってさぁ、結局何なの?」
「永久の生死の繰り返しって事かな」
「ふーん?」
◇
「そんな事もあったかもな」
「へぇ…覚えてないんだ?」
杖を握り締めていた手にじんわりと汗が滲む。
一緒に来ないか。とあの日言われた言葉。
「お前は俺様と共に在るべきだ、ロゼ」
「私はそうは思わない」
だって…
生死を無限に繰り返すんでしょう?
(相手は私じゃなくたっていい)(どうせ死んだら何もかもリセットなんだから)
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