どこか遠くの方で何かのチャイムがなった気がした。
   だけどそんなのどうでもいいや。そう思って再び意識を
   手放そうとした時だった。ふわりと突然感じたいい香り
   お花畑にいるみたいなそんなかんじ。だけど私はこの
   匂いを絶対に知っていた。ううんと…?そうだ。
   私の大好きな精市!



   はっと覚醒。ぱちりと目を開ければ目の前には非常に
   端正な精市の顔。そのまま辺りをきょろきょろと見回せば
   まだ消されていないチョークで書きなぐられた数式。
   あぁ…数学の授業が終わってしまったみたいだ。



   「ふふ、おはようなまえ」
   「ん…。精市おはよう」
   そう言って笑えば精市も笑ってくれる。部活をやっている
   時の真剣な顔もかっこよくて好きだけど、やっぱり私は
   笑っている精市の方が好きだ。



   「寝ている時、涎垂らしてたよ」
   「…!」
   恥ずかしさも忘れて急いでノートを確認すれば見事に私の
   唾液が垂れていた。ああ、なんということを…。セーターの
   袖でごしごしと拭き終わると、丁度弦一郎が私達を訪ねてきた。
   あれ、ちょっと待って。このノートって確か…?書いてある文字を見る。



   「ねぇ精市」
   弦一郎と話していた精市のベストの裾を引っ張って呼ぶ。
   これからどんな仕打ちが待ち受けているか少し怖いけど。
   「あのね、怒らないで聞いて欲しいんだ」
   「うん?どうしたのなまえ」
   「さっきのノートね、精市のだった」
   精市は笑顔のまま自分のノートを確認すると笑顔のまま
   弦一郎の方にくるりと体を向けた。



   「大丈夫だよなまえ。俺はなまえには痛いことしないんだ」
   「うん…?ありがとう」
   精市はにっこり笑っていた。笑顔の精市は大好きだけど
   その笑った顔は何か凄く怖かった。









   もう正にご愁傷様
   (ゆ、幸村。何故俺を殴る…)(あぁ、丁度近くにいたから)

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