「赤也かわいいっ!」

 な、なんなんだ。新手の嫌がらせなのかこれは…?
 先程から俺のことをぎゅーっと抱き締めて髪をくしゃくしゃと撫でてくる。
 はっきりいって、どう対応したらいいか分からずにいた。




 「なまえ、赤也が困っているよ」

 「だって精市!赤也がこんなに可愛いのがいけないんだよ!」

 そうしてまたわしわしと頭を撫で始める。
 なまえ先輩は幸村部長と同じクラスで気丈なテニス部マネージャーだ。
 彼女には部長も副部長も全く怖くない様子だった。




 「(な、なんだか目が回ってきた…)」

 「…! みょうじ!赤也が大変なことになっている」

 「えっ?」

 見ると、赤也の顔は沸騰したように真っ赤になっており
 目の焦点は合っていなかった。その様子を見て幸村はふふっと笑みを零す。




 「赤也は本当になまえのことが好きなんだね」

 勿論なまえがその言葉を聞き逃すはずは無かった。
 今まで幸村の方へ向けていた視線を再び赤也に戻す。



 「赤也、ごめんね。今まで気づかなくて…」

 「あ…大丈夫、っス…!」

 するとなまえはううん、と首を横に振って赤也の手をぎゅっと握った。
 そして顔をぐっと近づけて赤也の唇に自分の唇を重ねた。



 「ごめん、そんなに私のことが好きだったなんて!これからは
  ちゅーでもぎゅーでもなんでもしてあげるから!」

 「えっ、違……わないけど、えと…って部長!帰らないで下さいよ!」









 相思
 (幸村…いいのか?)(ふふ、楽しいじゃないか)

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