馬鹿だな俺は。景吾はそう言って風呂あがりのまだ少し濡れている前髪をかき上げて夜空を仰いだ。丁度心地良いくらいの穏やかな気候だった。そして景吾は星を一度瞳に映してから、大きなベッドにぼふんと横になった。天蓋のカーテンがひらりと揺れる。私はベッドの端にちょこんと腰掛けた。お前がいつ俺の所からいなくなっちまうか考えるだけで苦しくなる。ごろりと寝返りをうって私の方を向くと、腕をぎゅっと引っ張る。温かくて大きな手。景吾はそのまま私の存在を確かめるかのように体を引き寄せて、私の頭に頬を寄せた。






「私だって離れたくないよ、景吾…」

「俺にはなまえしかねぇんだ」

「なに言ってるの?景吾には家も学校もテニスもあるじゃん」





一ヶ月に1、2回こういうことがあった。少しだけ上を向いて景吾の頬に軽く口付ける。彼は普段こそ俺様気取りで自分中心な部分があるが、本当は誰よりも優しくて、誰よりも周りのことを考えている。純粋過ぎるほどに純粋なのだ。だからこうして変な所に大きな不安を抱え込む。私が景吾の傍を離れる訳ないのに。そんなこと絶対に出来ない。





「ねぇ景吾、私も不安だよ。景吾と同じ気持ち」

「本当か…?」

「うん、本当」





私を抱き締める腕の力が不意に強まる。大好きとか、愛してるとか、そんなものじゃ表せないくらい。好意を超越して、お互いにお互いの存在が必要不可欠なのだ。酸素が無いと息が出来なくて死に至るように、私は景吾が居なくなったら生きていけないと思う。頭の上から、すんと鼻をすする音が聞こえてきた。私はやんわりと景吾の腕を引き離して今度は私が景吾の頭に頬を寄せた。上質素材のネグリジェに水分が染み込む。それさえも今の私には愛おしく感じるのだった。











私たちの星は涙で蒼く燃えた
(お前が)(貴方が)(いつまでも傍に居ますように)

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