「はじめ!」

後ろから急に抱きつかれたせいで視界がぐらりと揺れる。危うく手に持っていたフランス語の教科書を床に落としてしまうところだった。ふぅ、と溜息をついてから後ろを見るとなまえが満面の笑顔で立っていた。自分自身がこんなことを考えてしまうこと自体かなりの問題だが、彼氏という贔屓目無しに可愛い。もう怒る気にもならなかった。イメージは生粋の白。僕の好きな純粋な白だった。






「なまえ…急に来ると驚くから止めなさいといつも言ってるでしょう」

「うん、ごめんね。でも、はじめにあげたいものがあって…!」

「あげたいもの?」

「そう。はい、これ」





なまえが僕に手渡したものは丁寧に淡いピンク色の包装紙で包まれていて、元々付いていたであろうメッセージカードには慣れない筆記体で「for Hazime」とだけ書かれていた。今日は何か記念日では無かったはずなのだが、自分が忘れているだけだろうか?そうだとしたら酷い失敗だ。




「今日はなにかの日でしたか?」

「ううん、違うの。ただ昨日の帰りに偶然見つけて…良いなって思ったから」

「ありがとうございます。開けても良いですか?」





なまえが嬉しそうな顔でこくりと頷いたのを見てから、丁寧な包装を更に丁寧に剥がしていった。最後のテープを取り終わると白い体に金色で模様が彫られているシャープペンシルが現れた。とても綺麗な白だ。





「はじめって白が好きだったよね?私と色違いなんだ」

「とても綺麗です…。大切に使わせて貰いますね」

「うん、ありがとう!」





するとなまえはまたにっこりと綺麗に笑った。とても愛しくて可愛いなまえ。次は彼女の苦手な英語の授業だ。英語よりフランス語の方が得意だなんて少し可笑しいような気もするが、分からなそうな所があったら教えてあげようと思った。












芯まで純白な君は僕までも白に染めた
(そのシャーペンにはAmourって彫ってあるんだよ!いいでしょ!)

.