今日は部活もない。一人自主練に行くのもいいと思ったが、結局
  大人しく家に帰る事にした。際まで迷っていたせいで、迎えの車が
  到着するまでに大分時間が空いている。どうやって潰すかが問題だ。


  教室から校門まで歩くのに十五分もかかる訳がない。仕方なく
  ノロノロと廊下を歩いていると、少し先の方になまえの姿を見つけた。
  彼女は唯一と言っていいほどのまともな女友達で、実は密かに
  なまえに好意を抱いている。






  声を掛けようと近くに寄り、肩にぽんと手を置けばなまえはくるりと
  振り返った。だがその表情はいつもの明るい笑顔ではなく、泣き顔だった。
  それでも跡部を見ると咄嗟に笑って見せたがほんの数秒しかもたなかった。
  何があったかなんてことは聞かない。そのまま無言で歩き出せば、黙って
  隣をキープする。こいつはそういう奴なんだ。


  なまえには好きな人がいたらしい。前に散々話を聞かされたような気も
  しなくもないが、確か名前は言っていなかったと思う。今回の件も大方
  そっちの方向の話だろう。こうなってしまえば、もうどうすることも出来ない。






  隣でまだ泣き続けているなまえを見ると、ちくりと心が痛む。
  今こいつを抱き締めてやることが出来たらどんなに楽だっただろうか。
  もう泣くな、ってその綺麗な額に口付けてやることが可能だったら
  どんなに良かっただろうか。ふと目の前に呼んでいた車が停まる。


  
  「なまえ、乗ってけ。茶と菓子くらい出してやる」
  そうやっていつもの調子で言えば、彼女は精一杯笑ってありがとうと言った。
  今の俺様にこんな行動が許されるのかどうかは分からない。
  だけどすぐ傍で傷ついて悲しんでいるなまえを放っておくなんて出来なかった。






  俺様は今まで欲しいものは何でも手に入れてきた。地位も能力も権力も、
  全て。だけどどうして、何故。生まれて初めて本当に欲しいと願った。
  彼女に手が届かない。なまえを守りたいという気持ち、これだけは絶対に
  正真正銘本物だというのに。…どうして?











  Because
  (理由なんて簡単)(ただお前が好きだから)



  勘の良い方は気付いたかもしれませんが、この話は
  跡/部のキャラソンをイメージしました^^ 多分タイトルを見たら分かりますね    少しだけニュアンスを変えただけなもので…(笑)


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