久しぶりに間近で見た精市の顔はやっぱり綺麗で整っていて
思わずこくりと喉が鳴った。
その姿は、風に吹かれてすぐに散ってしまう花弁のように
儚く、直接肌に触れてしまえばしゅわりと音をたてて
消えてしまいそうだった。
じわり。熱いものが内側から込み上げて一気にあふれ出す。
良かった。今はそれだけしか考えられなかった。こんなに
歪んだ視界の中でも精市はちゃんと綺麗なまま。
「なまえ、遅くなってごめん。俺は大丈夫だから…もう泣かないで」
最後の言葉がやけに脆く感じて、そのままぎゅうっと精市に
抱きついた。もし彼がこのまま崩れて壊れてしまっても私は
絶対に離さないし、離れない。
共にあるべきだと教えてくれたのはそう、貴方だから。
雪の花弁
(もう君を、)(貴方を、)(失わない)
.