毎日、とても詰まらない事ばかりで飽き飽きしていた。
 自分にもこの寺にも。そこに光明三蔵法師と、弟子だかなんだか知らないが
 一人の少女がやって来た。

 この光明という男は全てを見通しているような不思議さを持っていて
 見ていればなかなか面白い。そしてあの少女もまた。




 いつものように、くだらない話ばかりしている奴等を置いて外に出る。
 鈴虫の鳴き声と闇を照らし出す月。今日はいつもより眩しく思えた。

 何だか分からない。けれどふと横を向けば、あの少女が縁側に腰掛けていた。
 薄ピンクの着物一枚で足をぶらぶらさせながら。





 前から話してみたいと思ってたから、少女の方へ足を進める。
 足音で気づいたのかこちらをさっと振り向いた。



 「…だあれ?」

 「君こそ誰なの?」

 自分が質問したのにまた質問で返されたのが気に入らなかったのか
 少しむっとした表情を浮かべた。



 「私はワルツ。そういう貴方は?」

 「俺は健邑っていうんだ」

 けんゆう、と反復して呟く少女を純粋な気持ちで可愛いと感じた。
 ワルツの隣に腰を下ろせばたちまち会話が始まる。



 「ワルツはさぁ、何歳なの?俺より年下でしょ?」

 「私は14歳だよ。多分…」


 「多分って、自分のことなのに」
 
 「自分がいつ産まれたかなんて覚えてないよ」

 決して悲しくなんかなさそうに言うワルツとどこか自分が似ていると思った。





 「健邑は?何歳?」

 「俺は17かな、多分」

 そこまで聞くとワルツは目を丸くした。



 「健邑って面白いね」

 ふふっと肩をすくめて笑う。
 梅の花が咲いたような唇が小さく弧を描く。




 「健邑はいつも遅くまで起きてるの?」

 「大体ね」

 「眠くないの?」

 「うん、多分ね」



 「私もね、いっつもこうやって月を見てるんだ」

 「なんで?また…」

 「眠るのが怖いの。目を閉じて暗くなったら、次は無いのかなぁって考えちゃう」




 今度は健邑が目を丸くした。この子は一体…。




 「じゃあ一緒に寝る?」

 「まさか…!」

 ワルツがぱっと目を伏せる。
 初々しく少女らしい反応がとても可愛い。



 「冗談冗談、それじゃあこれから朝まで話します、か」

 「うん、そうする」






 それは月さえも看逃してしまいそうな物語


 
 (闇か光か侵食されるのはどちらだろうか)

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