「八戒は辛いの…?」

 「辛くない、と言ったら嘘になるでしょうか」


 真面目な話でも笑みを浮かべながら答える八戒。


 「でも、もし…」

 声が震えた。目をぎゅっと瞑って涙を堪えた。



 「もし花喃が生きていたとしても、あの人は僕の姉です」

 だから、と微笑んだ。今度は少しだけ悲しそうに。



 「でも、八戒は幸せでしょ…?」

 「そうですね」


 だったら私が代わりに死ねたら、今八戒の隣に居るのが花喃さんだったら。
 ぽたり、涙が落ちた。八戒のではなく、私の涙が。




 「僕の為に泣いてくれてるんですね」

 ふわり、優しく包み込まれる。


 「僕はワルツが大事です」

 心の柔らかい部分にツンと突き刺さる。甘く鋭い言葉。




 私があの人の替わりになれるならそれでもいい。
 少しでも八戒の哀しみを埋められるなら。


 「すみません、少し肩を貸して頂けませんか」

 トン、と肩にかかる重みと温もり。


 八戒は涙を流した。だけど、それは形になることは無く、私に吸い込まれていく。
 声もなく泣き続ける八戒の背にそっと腕をまわした。






 
 (闇に浮かぶ満月は)(私と貴方を嘲笑う)

.
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -