花が咲き乱れる神殿の中、一人横たわっている貴方を見た。
  先程まで激しい戦闘が繰り広げられていたであろうこの神聖
  な空間では穏やかな空気と時間が流れている。ただ唯一その
  痕跡を残しているのは、いつもは綺麗な純白の羽についた汚れ。



  青緑の何ともいえないくらい美しい長髪に指を滑らせれば、
  彼はうっすらと目を開けた。そして痛む体の傷に顔を歪める。





  「ワルツ……?」

  「ラミントン、貴方はやり遂げたんですね」

  「えぇ、無事とは言い難いですが」





  そしてまた彼は自嘲気味にふっと笑うと、大分疲れました。と言って
  静かに目を閉じた。堕天使となったフロンと共に魔界に帰って行った
  魔王の少年の動向をラミントンと見続けてきた私には、その変化が
  手に取るように感じられた。



  フロンの為に流した涙。それは天使が流すものより遥かに清らかで
  思いやりに満ちていた。かつてのクリチェフスコイに重なるものが
  見えた気がした。近くで心配そうに見ていた天使達を集めて言った。







  「みんな、この人を運ばなくちゃ。手伝ってくれる?」

  「はい。ワルツ様」

  「あなた達にも謝らなきゃいけないわね、本当にごめんなさい」

  「大丈夫です、ワルツ様。大天使様も無事でしたし、行きましょう」

  「…みんなは大人ね。ありがとう」



  とても綺麗な顔立ちをしている天使兵の皆。天使兵なんて役職がある 
  けれども、普段は戦いなんて殆どすることは無いし、温厚な性格だ。
  何も知らない。何も理解していない中で戦って傷ついて。罰を受けるなら
  フロンではなく私達が受けるべきだったと感じる。







  ベッドにラミントンを寝かせた後、私は隣にあった椅子を引っ張って
  頭だけをふかふかのシーツに乗せる。すると不意に頭に手が乗せられた。
  温かい、ぬくもり。天使と悪魔の交流。あの二人によってもたらされた
  平和がずっと続けば良いと思った。そして私も静かに目蓋を下ろす。




  「ねぇラミントン、あの子達はきっと上手くやってくれるわ」









  

  愛で溶けたキャラメル
  (ラハールさん、エトナさん、ご飯できましたよ!)(げ…お前が作ったのか…?)

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