「雷光さん、お茶どうぞ」

 はい、ワルツも。と言って私にもくれる。
 てきぱきと台所へ戻っていく俄雨をいつも目で追ってしまう。
 俄雨は凄いなぁ。
 勉強は私より出来て、家事も私より上手い。
 ただ座ってお菓子をかじっているだけなんて、何だか恥ずかしい。






 「(たまには料理でもしてみようかな)」

 そそくさと身支度を整え、買い物に行くためにバッグを掴む。



 「おや、ワルツ。何処かへ行くのかい?」

 「あ、雷光さん。少し買い物に行ってきますね」


 遅くならないようにね。という雷光さんの声を後ろに
 はーい、と返事をして玄関を飛び出す。
 今日、何にしようかな…。


 簡単で、美味しくできるもの。
 どうせなら二人が喜んでくれるものが良い。蜂蜜?流石に使えない…か?






 ◇






 「と、いうことで!」

 雷光と俄雨の前にてんと盛られたほんわかした物。



 「酢豚にしてみましたー!」

 しかも二人の好きな蜂蜜入り!と付け加える。
 食事を終えた後、雷光さんと俄雨は任務で出かけてしまったから
 一人で片付けを済ませ、暇な時間を持て余していた。





 「少しは、役に立てたよね…」

 そこで私の意識は途切れた。







 ◇







 「おや、」

 「あ…」


 帰ってきて見れば、ワルツがソファにもたれたままぐっすりと眠っていた。



 「全く…。ワルツは無理をするから!」

 「俄雨、おやめよ。ワルツが起きてしまうからね」


 実は二人とも分かっていた。
 ワルツは料理が超が付いても良い程、苦手なことを。そして自覚がないことも。
 実際今日の酢豚も、どうしたらこうなるのか疑問にさえ感じてくる味だった。





 「だけど頑張ってくれたからね」

 そう言ってワルツの頭をよしよしと撫でる。



 「さぁ、ワルツは私が運んでおくから俄雨もお休み」

 ワルツを横抱きにして闇に消えていく雷光。


 「私も眠るとしようか。」








 均衡
 (それは表と裏の)(間のお話)

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