突き刺さるような冷たい空気。はあっ、と息をはくと本当に白くなる。
 これは冬だ。足の感覚は既に殆ど無くジンジンと痛みのみが辛うじて解る。



 「ねぇ三蔵、寒いね」

 「…あぁ」


 「きれいだね、雪」

 「…そうか?」




 そこでワルツは、え。と顔を歪める。

 「嫌だなぁ、三蔵。雪よりお前が綺麗だなんて言うわけ?」

 「…言わねぇよ」



 自分で言ったことなのにふぅん、と興味なさ気に答えるワルツに視線をやる。

 「好きなのか?雪」

 「うん、沢山降るけどすぐに溶けちゃうとことか」

 ふぅ、と煙草からあがるのは私の息と同じ白。




 「綺麗で、ふわふわしてて、でもずっと見てられないの」

 溶けちゃうからね。と小さく呟いたその瞬間。
 ぐしゃっと音をたてて三蔵の頭に何かが直撃した。

 「三蔵…?」



 見ると三蔵は見事な雪まみれ。



 「おーい!ワルツー、さんぞぉー!なーにやってんだよー!」

 更なる雪だまを固めながらピョンピョンと飛び跳ねる悟空の姿が目に入った。


 「何やってんだよはこっちの台詞だ…」
 
 「ふふ、でも楽しそう!」

 わなわなと震える三蔵を置いて、私はぱっと駆け出す。




 「私も入れて!」

 まだまだ私たちの冬は始まったばかりだった。






 
 (悟浄いきますよー)(ぐしゃあっ)(八戒怖っ!)

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