君の知らないあの子
その知らせを聞いたのは、何もかも遅かった。

今回言い渡された任務は、いつもとあまりかわりなく。簡単に終わる任務のはずで。
俺とあいつは5人の小グループで二手に別れて殲滅に向かった。
俺の方は順調に終わり、伝達係りによればあっちの方が一足早く終わったらしい。
後で小言を言われそうだな。そんなことを思いつつ合流ポイントへ向かう。

もう着いてると思ったが、意外にもこちらが一番乗りで、すぐ来るだろうと思い待っていたが、30分たっても来ない。
不信に思い、伝達係りに連絡を取るよういったが一向に通じない。胸騒ぎがおさまらず、次第に苛立ちが募る。
周りにもそれが通じたのか気まずい空気が流れた。(短気なのは知ってるから言うな。)

そんなとき、何者かの気配和感じ、すぐさま臨戦態勢に入る。この場にいるもの全員がその微かな気配を感じ取ったことから優秀なやつらだったなと改めて感じた。
姿を現したのは、あいつの班の伝達係り。
その姿を見て、何かあったのは一目瞭然だった。俺たちの姿を見て安心したのか、そいつはその場で崩れ落ちる。
駆け寄り何があったのか聞けば、罠にはめられたとのこと。
あいつらが簡単に罠にはまるとは思えなかったが、いろんなことが重なったのだろう。足の早いこいつを伝達に、あいつらはまだ戦っていると言う。
班のやつにこいつの手当てと待機するように言い、俺は一人、あいつの担当の場所へ走った。

「…ッ!!」

その光景を見て、思わず息を飲む。
辺りに広がるの多くの屍。敵の応援がかなりの数だと聞いていたがこれ程とは…。
だが今は敵より味方の安否。
この数だ、無傷と言うのは期待できないだろう。神経を研がせ、周りを確認。

「この気配…」

微かに感じた気配。あいつのに間違いないが、どこか変な感じだ。
ともかく気配をたどりあいつのもとへ向かう。
思いの外あいつはすぐに見つけることができた。
その場でつったって手元でなにかをしている。カチャカチャと聞きなれた音が聞こえ、銃の弾を装填しているようだった。
だが、回りにはもう敵の気配もしない。声をかけようとしたその時、

 ー耳障りな銃声が鳴り響いた。


弾は真っ直ぐ、俺の額めがけて飛んできた。
持ち前の反射神経と嫌な予感でとっさに避けたが弾丸は頬を掠め、傷口から血がながれる。

「…汐、てめぇ」

なにしやがる。そう言葉を続けようとしが、相手の笑い声に言葉は音にならなかった。

「残念。外れてしまいましたー。」

心底愉快と言うような表情を浮かべ、くるりと体を回す。
何が楽しいのか、笑い声が止まない。

「おい、汐。班のやつはどうした」
「班ー?…あぁ!」

両手を叩いて、今思い出したと言わんばかりの態度。そして、あいつはある方向を指指した。
その方向を目を凝らしてみればみなれた制服をきた、あいつの班のメンバーだった。
側により生死を確認。脈がかなり弱いが、微かに生きていることが確認できた。

「おい!さっさと手を貸せ!」
「??なぜですかー?」
「何故って…!早くこいつら手当てしねぇと手遅れになんだろ!!」

怒鳴りながらあいつの方を向けば、やつはさっきまでの笑顔をやめ、無表情に。ゆっくり近づいてくるあいつの回りの空気は、いつもの人を寄せ付けるものではなく、今にも人を殺しそうなものだ。

「あらー。まだ生きてたのですかー。」

そういって拳銃のトリガーを引き、仲間にに向ける。
一瞬何をするのかわからず固まってしまったが、引き金を引く寸前でやつの腕を蹴りあげ、拳銃を飛ばす。
驚いたように目を見開くあいつだが、こっちの方が驚いている。

「なにするんですかー」
「こっちの台詞だ。てめぇ今何しようとした…!!」
「えーだって、早く殺してあげた方が気が楽でしょうー?」

いつもと変わらない笑顔でそういうあいつ。(あぁ。やっぱり、いつもの笑顔は…)
薄々気づいてはいた。
あいつの笑顔の違和感に。

でもー

「お前は誰だ」

さっきまでの感情を切り落とし、冷静になってそう問う。
一瞬笑顔が消えたが、すぐさままた広角をあげ笑い出す。嫌な笑みだったがさっきよりかは今のこいつの本当の笑顔に近い気がする。

「もっと頭が固くて、馬鹿なやつだと思ってたよォ…」
「……。」

いつもより少しトーンが落ち、皮肉さが混じった声。
不気味な笑い声をあげながら、飛ばされた拳銃を拾うやつ。念のため、俺も拳銃に手を伸ばすが、やつはセーフティをかけ、ホルスターにしまった。

「お前のことは中から見てたんだァ…」
「(中…??)」
「あいつがすげぇ楽しそうに言うからどんなつかなァって」

クククと、笑うあいつは倒れている仲間二人を軽々しく抱えあげる。

「おい!そいつらをどうするつもりだ!」
「何いってるんですかァーせんぱァーい。早く運ばないと本当に死んじゃいますよォー」

満面の笑みでそういうあいつ。言い終わった瞬間地面を蹴り、一足早くこの場を離れる。待てと反射的に言ってしまったが、待つわけもなく。俺も残り二人を抱え地面を蹴った。

「おいこら、汐!!」
「早いはやァーい。流石せんぱァい。」
「そのしゃべり方やめろ!腹立つな!」
「おこだァーおこーー」

キャッキャとどこか汐に近い笑いかた。だけど汐以上に腹が立つ。

「汐、てめぇ…さっきから「利緒」…は?」
「利緒だよ。」

"覚えれるかなァー。琥珀せーんぱい"と皮肉たっぷりにいわれ…


やっぱりこいつ後でしめる。
そう決意した任務帰りの今日この頃。


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