永遠を信じてみたくなった。
皆様はじめまして〜。ご機嫌麗しゅうでございますか〜??
僕の名前は春風汐と申します〜。僕は今

全 力 疾 走 なう なのです〜。

どうして走ってるかと気になりますよね!?仕方ありません、教えてあげましょう〜!
僕が全力疾走している理由。それは―

“約束をしている時間に1時間遅刻しているから”なのです〜!やばいですよね〜。僕もそう思います〜。しかも待たせている相手があの琥珀先輩なのです〜!
あ、琥珀先輩は僕の一つ上の先輩で、なんかまぁ色々ありましてよくお話しする仲になったのです〜。良い先輩なのですが少々怒りやすい方で〜あ、俗にいう“短気”ですね〜!もう、着いた途端何を言われるのか、怖くてたまりません〜。

「(この塀を乗り越えて近道です〜)」

訓練して身についた身体能力。自分の身長より高い塀をいとも簡単に乗り越え、目的地はもう目の前。
待ち人の姿をとらえ、急ブレーキをかけ物陰に隠れる。

待ち合わせの目印であるオブジェにもたれ、両腕を組んで目を閉じている彼。
正直言って彼はイケメンの類に入る。通りかかる女性が頬を赤らめているのがその証拠だ。しかし、誰も声をかけようとはしない。それもそのはず。

「(おぉ〜。相変わらずの仏頂面に恐ろしい殺気なのです〜)」

彼から放たれる不機嫌なオーラから、近づいて声をかけることをすれば即殺されそうだからだ。
頬を赤らめていた女性もそのオーラを感じとりすぐさま青ざめ目線をそらす。

「(通行人の皆様がかわいそうなのです〜…)」

そういってハンカチで目元を拭うそぶりをしてみる。さすがにこれ以上は周りの人がかわいそうだと思い、意を決して“ファイトだ、僕!”といい気合を入れる。

「琥珀せんぱ〜い〜〜待ったで〜す〜〜?」

片手をあげ、満面の笑みとともに腕を思いっきり振る。

「いや〜。まさか僕としたことがここまで遅くなってしまうとは〜」

言い訳らしいことをつらつら言っていると、彼の腕がゆっくり下がり、目が開かれた。
その途端―

「うぉ!」

汐の目めがけてシースはついているがナイフが飛んできた。明らかに油断しているように見えたが、流石は訓練生というべきか、汐は驚いたそぶりを見せながらもちゃっかり左手でナイフを受け止めていた。

「ッチ」
「“ッチ”じゃないです〜!危ないじゃないですか〜!公共の場ですよ〜」
「どうせお前止めるだろ。本当ムカつくな」
「そんな〜照れます〜〜」
「別に褒めてねぇよ」

両手を頬に当て、顔を左右に動かしながらそう言う汐に、彼は心底どうでもいいというような顔をして否定の言葉を述べた。

「ていうか。お前どんだけ遅刻したかわかってんだろうな」
「えーっと〜。ざっと1時間くらいです〜?」
「なんか言うことねぇのか」
「…琥珀先輩。

 シュークリーム食べに行きたいんですね〜!?はい、一緒に行きましょう〜!」
「…ほぅ。」

眉間のしわがどんどん深くなる。指で押さえてあげたい衝動に駆られるが…。
彼は首を回したり、腕を鳴らせたりする。まぁ同然の結果だ。

「てめぇ今すぐぶっ殺す…」
「はっ!琥珀先輩おこなのです??もしかしておこ〜なのです!?駄目ですよ〜!軍人たる者、いつでも冷静でいなくては〜!」
「っるせぇ!!」

右ストレート、左フック。学生とは思えないほどの速さで攻撃を仕掛ける彼だが、汐も相変わらずの笑顔ですべての攻撃をかわす。
かわし終えた汐は体を半回転させ、来た道をまた全力疾走で引き戻る。

「っのやろ…」
「あはは〜先輩、こっちまでおいで〜なのです〜〜」

上半身を後ろに向け、また片手をあげて走る汐。恐らく脳内では海岸でのキャッキャウフフが醸成されているのだろう。
そんな汐に黙ってる琥珀ではなく、

「(こいつ絶対殺る。)」

一瞬冷静になり、殺る気で走る。相変わらず汐は器用に後ろ向きで走っている。
このまま汐のペースに持ち込まれるかと思ったその瞬間―

「わわわ」

足がからまりそのまま後ろ向きで盛大に倒れた汐。お互い何が起こったのかと固まり二人の間に沈黙が流れる。
だがその沈黙も長く続かないもので。

「いぃぃいぃーたーいぃーです〜〜!!」

汐は後頭部を両手で押さえながら涙を浮かべ叫んだ。その声に彼も呆けるのをやめ、汐のもとまで歩み寄る。

「何してんだ」
「っく、琥珀先輩、流石です…。こんな卑劣な罠を仕掛けるとは〜…。」
「……。」
「あ、やめて下さい。そんなかわいそうなものを見る目で」
「うん、もうお前黙れ。」

今までの恨みも含め、鳩尾にかかと落としを食らわす琥珀。一応力加減はしておいた。とおもう。もろにくらった汐はその場で唸り声をあげている。
琥珀は倒れている汐の足を掴み、邪魔にならないよう道のすみに引きづりながら運んだ。

「…優しさがないです、琥珀先輩〜」
「運んでやるだけ優しいだろ。それとも車の前に置いてやろうか」
「わぁ、琥珀先輩やっさしいです〜」

運び終えた琥珀は手を離し、また腕を組み建物にもたれる。足を離された汐は上体だけ起こし、体に着いた砂等を落としていく。

「で、話だけど」
「??」
「次の作戦。本当に行く気か?」
「あれれ、知ってたのです〜?」
「……。」
「黙ると本当に先輩怖いです〜」
「茶化すな。」

彼が立ち、汐が座っているからだろうか。いつも以上に威圧感を感じる。
しかし汐も笑顔を崩さない。

「行きますよ〜!僕に与えられた任務ですからね〜!精一杯頑張るです〜!」
「……そうか。」
「はい〜!!」

任務が決定した以上、生徒である琥珀にどうこうできる問題ではない。了承の言葉を言いつつ、表情は全く納得していないというものだった。

「…話は以上だ。帰るぞ。」
「え、帰るのです〜!?」
「……かえってシュークリーム作ってやる。」
「!!」
「任務が終わったときにも作ってやるからさっさと帰ってこいよ。」

そういってすたすたと前を歩いていく琥珀。
彼の後姿を見ていた汐だが、耐え切れず顔下に向ける。

「本当に、優しい人ですね〜…」
「なんか言ったか?」
「…いえ〜!なんでもないのです〜!」

振りむいた琥珀に笑顔を向け、汐は立ち上がり彼の隣へ走った。


 - 永遠を信じてみたくなった。 -
((この任務で、最後。))


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