君は気づいてる?
「今日の授業もさっぱり分からなかった…」

本日最後の授業が終わり、皆は帰る支度をする。
中学三年生の冬。もちろん部活も引退し、いよいよ受験だ。
勉強が…、
正直に言わなくても苦手な彼女、利津は、高校に受かるかも危うく、放課後は親に無理矢理入れられた塾で毎日涙を流している。

「塾の先生怖すぎなんだよー、あんな頭ごなしに起こんなくてもいいのにーー」
「そりゃお前相手なら怒鳴りたくもなるわ」

塾のことを思い、泣き言を言う彼女に声をかけてきたのは隣の席に座っている三嶋朝燈。
世間で言うあれだ。イケメンの類に入るらしい。

「いつも平均点ぎりぎりとってる人に言われたくないよ!!」
「赤点ばっかのやつが偉そうに言うな!」
「なんだとぅ!?」

言い返そうと言葉を考えるも、なかなか良い言葉が思い付かない。そんな彼女が睨んだままなかなか言葉を発しない理由に勘づいたであろう朝燈は、だんだん可愛そうなものを見る目に変わっていき、

「あー…、はぁ…。俺が悪かったから、勉強頑張ろうな…?」
「くそっ…イケメン、はげろ!!」
「おいこら。」

HRも終わり、彼女はある教室へ向かう。
その教室には彼女の大切な人がいるのだ。

そっと教室のドアを開け、中の様子を伺う。そうして見つけたあの人は、教室の一番奥の机で顔を伏せ、どうやら眠っているようだ。

起こさないように彼のもとへ行き、近くにあった椅子に向かい合うようにして座る。
少し寝顔を見たかったりしたが、見事に顔は机の方をむき叶わなかった。

寝顔は諦め、彼女は彼の頭の上に手を置き頭を撫でる。
彼の髪はふわふわでとてもさわり心地が良いのだ。今日もいつもと同じあのさわり心地が―
 なかった。

「!?」

驚いて自分の指先を見れば絡まった彼の黒髪。
さわり心地もはっきり言ってごわごわとしていて気持ちが悪い。

「(手入れしてっていってるのにー…)」

普段なら今すぐ起こして髪を整える彼女だが、今回はそうはしなかった。
というのも、彼のこの髪は彼自信の髪でなく鬘なのだ。
学校スタイルのその鬘は、櫛をまったくいれずいつでもボサボサで、彼の性格も含めると、どこか近寄りがたい雰囲気を出している。
それが彼の狙いでもあるのかもしてないけれど。

「(櫛でとくぐらい簡単なのに…)」

言っても彼がしないということは、もう何を言っても無駄だろう。
半分諦めた気持ちで彼女は彼の頭をなで続けた。

「ん?」

今まで微動だにしなかった彼の体がピクリ動く。
彼女は撫でるのを止め、肘をつき、彼の様子を見つめた。

ゆっくりと首が上がり眠たそうな表情が見えてくる。
見慣れているはずなのだがつい笑みがこぼれてしまう。

「おはよう、湊」
「…。利津…??」

目を擦りながら視界に彼女をいれ、小さくおはようと返す。
彼の目が若干覚めたところで、二人は学校を出た。

「でね、塾の先生がうちに―」
「…。」

帰り道、周りから見れば彼女が一方的に話してあるように見えるが、彼もうなずいたり、相づちをうったりとちゃんと話を聞いている。
彼女の家の前についたところで、彼はなにかを思いだし、鞄を開く。

「これ…、」

そういって彼女に渡したのは小さな白い封筒。
頭に?マークを浮かべ、中身をみる。

「お守り?」
「うん…。合格祈願…。
お守り…人から、もらった方が…ご利益あるって、聞いたから…」
「…、」

頭は良いはずなのに、いつも言葉を選んではっきりものを言えない彼。
人になにかをあげるのは難しくて嫌いだともいっていた。
今も彼女の顔を見ず斜め下を向いている。

「(そんな湊からの…)」
「あ…、もしあれだったら、こっちで…持っとく、から…」
「ううん!!大切に…」
「…?」
「ずーっと大切に持っとくから!!大事にするからね!!」

彼からもらったことがよほど嬉しかったのだろう。
彼女は満面の笑みでそう言った。
そして彼は―

「…でも。お守りは、1年しか…
効果、ないから…」
「……。」


‐君は気づいてる?‐


「もー…。でも…うち、勉強がんばるからね!!」
「うん…応援、してる…」
「〜〜!!!!湊大好きだーーー!」
「……、どうも…」


((僕も、君のことが…))


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