大切なきみのためならば
「少し人手が足りなくてね」

事の始まりはボスのその一言だった


「やっちまった…」

ファミリーのアジト兼屋敷の医務室。そのベットの上にシロはいた。
シロの腕と足には痛々しく包帯が巻かれている。 暇そうな顔をしているが、つい先ほどまで血がとまらず大変だったのだ。

なぜこんなことになったのか
 それはつい数時間前のこと―…


シロはいつものように仕事を終え自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていた。
仕事といっても簡単な書類整理 シロは普段溜めたりしない性格なので、誰よりも早くに終わっていた。
クロはまだ仕事だろうな…そんなこと思いつつ足を進める。
クロはシロと違いつい後回しにしてしまう。 そのため以前のようなぎりぎりになって泣く羽目になるのだ。
何度言っても治らず、シロは頭を悩ましていた。

「どうすっかな…」

そうつぶやいたとき、前方からここのファミリーのボスがシロと同じく何かに悩みながら歩いているのを発見した。

「…ボース」
「!…あぁ、シロか」
「何ボーっとしてんの、変な顔ー」
「相変わらず失礼だね…」

少し眉間にしわを寄せそういうボス。
するとボスは何かいいこと思いついたような顔になる。

「…シロもう仕事終わり?」
「……?」
「少し、人手が足りなくってね(ニコ」



そうしてついた先はのどかで小さな町。
今回の任務はこの町の調査すぐ終わると言っていたのでクロには何も言わず、部下1人とここに来た。

任務で外に出ることは久しぶりだったので若干わくわくしているシロ だが、クロに何も言わなかったことが気がかりで早めに終わらぜて帰ろうと作業を進める。


もうすぐで終わる、そんな時事件は起きた―

どこから情報が漏れたのか前々から敵対しているファミリーのやつらが2人を取り囲んだ。
ざっとかぞえて30はいる。

「(面倒なことになりやがって…)」

シロのファミリーは争い事はあまり好まないタイプ。といっても今のボスになってからだが。
このファミリーはシロのファミリーをなぜかライバル視しており、無駄に争いを吹っかけてくる。
ファミリーの方針が変わってからは、その数がかなり増えてきた 今回もそんな感じだろう。

「(武器もってくるんだったな…)」

調査だけの予定だったのでシロは予備の拳銃1 丁以外武器を持ってきていなかった。
簡単に争いを吹っかけてくるといったが、負ければそれなりの傷は負う。
やるしかないかと思いシロは相手に向かっていった。


「っな!」
「こいつ、強い…!?」
「馬鹿、こいつは幹部の一人だ…!」

部下2人と聞いていたのか、相手はシロの強さに驚いていた。
弾に限りがある銃はとりあえずおいておき、 殴る蹴るで相手を倒していく。
こっちが優勢という空気になった時―

「うわぁあああ」
「!」

一緒に来ていた部下が声を上げる。
振り向けばやばいというのはすぐに分かった。

「ッチ」

舌打ちをし、すぐさま拳銃を構え打つ。
弾は相手の腕に当たりひるんだとこで部下の服をつかみいったん引こうと走る。
一つの銃声が聞こえ、2人は物陰に隠れた。

「シロさん…す、すいません!」
「怪我はねーかよ」
「はい…!シロさんは―…!! シロさん足…!」

部下が声を上げるのも無理はない。
さっきの銃声。外れたかと思ったそれはシロ の足に貫通していた。

「うるせぇ…声あげるな」
「…っ」
「(どうする…。あらかた倒したがこの足じゃ …)」

相手との距離を見ながらシロは必死に頭を動かしていた。

「おい、お前…」
「はい!?」
「街行ってボスに連絡しろ」
「え、」
「あいつらは俺が片づける。」
「しかし…!」
「さっさと行け!」
「っ…はい」

そしてその部下は町の方へ走る。

「面倒くせぇ…」

そうつぶやき、シロは銃を構えた。



―――――――――――――

敵を倒し、気が付けば医務室のベットの上 だった。
部下がうまく応援を呼んだよう。
ボスの話では、ついた時にはすでにかたはついていたらしい。
最後のほうの記憶はあいまいだったのでシロ自身驚いていた。
一通り話は終わり、ボスは仕事に戻っていった。

「あのボスが謝るなんてな…」


「シロ」
「?」
「悪かったね…」
「…え、誰」
「殺すよ?」
「さーせん…」


一人になりシロはボーっと今回のことを考える。

「(武器がないってのもあったけど、あんな 下っ端に手間取るなんてな…)」

全員片づけたといっても、この有様シロは悔しさからか手に力が入る。

するとドアをノックする音。
シロはハッとなり返事をする。相手は返事を聞き、何も言わずドアを開けた。

「クロ…?」
「……。」

そこにいたのは片割れであるクロ。
シロが運ばれたと聞きここに来たのだろう ドアをゆっくり閉め、シロのそばにやってくるクロ。口を開かないクロは見た感じですぐわかる。

「(…これは、やばいかも…)」
「シロ…」
「…なんだ?」
「誰にやられたの?」

いつものように穏やかな口調で言うが、いつものクロではない。

「クロ…」
「ねぇ、誰にやられたの??」
「…。」
「言ってよ、シロ」
「もう終わったんだ。あいつらは俺が始末し た」
「そんなこと関係ないよ。シロに怪我を負わせるなんて、生かしておけない」
「(マジギレじゃんか…)クーロ。落ち着けって」
「俺はいつも通りだよ?(ニコ」
「(どこがだ…!)」
「シロ教えてよ…」
「……。」

クロがそういうがシロも頑固な性格のため曲げれない。

「……。俺は…」

シロは絶対言わないというのはクロでもわ かっていた。そしてクロは口を開く。

「俺は、シロが誰かに傷付けられるの、我慢できないよ」
「……。」

そういったクロはゆっくりシロに手を伸ばす。
その手は包帯が巻かれているシロの腕へ。

「だってさ、シロを傷付けていいのは…
俺だけだから…」

そういってギュッと腕をつかむ。

「っ!」
「ねぇ…シロー…。言ってよ。言ってくれないと、俺そこら辺の貧弱な奴ら殺したくなる…」
「クロ!」
「あぁ、そっか。シロと一緒にいたやつ!
あいつなら知ってるよね」

パット手を離し、クロは笑顔になる。

「あいつに全部吐かせよう!その場にいたやつら全員。
そして、シロを傷つけたやつ全員…!」
「クロ…!」
「まっててね、今からそいつら全員シメてくるからさ!」

そういいクロはドアの方へ歩いていく

「…ッチ クロ」
「…何?」
「…俺を一人にするのか?」
「…え?」
「俺今日はこんな状態だし、多分部屋にもか えれねぇ」
「……。」

「ここで一人で寝るってこと。わかる?」
「俺も一人なの…?」
「今日はな」
「そんなー…。」
「だからさ」
「?」
「……今日はそばにいろよ」
「…!」

シロがそういったとき、クロはいつものような笑顔を浮かべシロに抱き着く。

「シロ大好き―!」
「痛いって!」
「あ、ごめん」
「おまえなぁ…」

抱き着いたままのクロの背中をポンポンと叩 き落ち着かせるシロ

「(まったく世話が焼ける…)」

傷口から軽く血がにじんでいる包帯を見て、 後で巻きなおさないとなと思うのであった。


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