どうして、
「(移動教室と言うのは、面倒なものだな)」


授業が終わり、ツバサは教科書をもって自分の教室に戻る。
ツバサの好きな理科であったが毎回教室を移動するのは面倒。
早く教室にもどって次の準備をしなくては…
そう思い、ツバサは歩くスピードを少し早める。

ふと窓の外をみれば、今日も一段と良い天気。
つい、この空を自由に飛び回りたいと思ってしまう。

少し視線を下げれば木に登ろうとしている男子生徒の姿があった。
よく見れば手に何か持っている。
向かっている先には鳥の巣。
これから察するにどうやらおちた鳥を巣に戻そうとしている様子。

ツバサはそれに気づいた瞬間、その男子生徒がいる方向へ走っていった。


「そこで何をしている!」
「うぉっ!?な、なんだお前」
「何をしていると言っているんだ!早く降りろ!」
「ちょ、待てよ。こいつ巣に戻してからな」

彼は予想通り鳥を巣に変えそうとしているらしい。
ちらっと見えた鳥はツバサと同じー…

「(燕…!!)」
「よしっ…」

自分のことを思い出してしているうちに男は雛を巣に返してしまったらしい。
彼は用事が終わるとすぐ木から降りてきた。

「で、なんだ?」
「……。」
「ん、お前ネクタイの色…1年か?」
「……。」
「おーい 」
「余計なことを…」
「え?」

それだけ言いツバサは来た道を戻る。
残された男子生徒はポカンとした顔をしていた。


次の日
ツバサは昨日のあの木の傍にいた。
視線の先には恐らく昨日と同じヒナがまた地面に、
ツバサは黙ってその光景を見るだけだった。

「なに見てるんだよ!」
「……。」

そこに来たのは昨日の男子生徒。
彼は持っていたものを投げ、ヒナに近づく。

「触るな」
「!?」
「そのヒナはもう助からない」
「なっ!」
「お前だってわかっているだろう。そのヒナは昨日も落ちていたヒナだ。
何度巣に戻してもまたおちる。」
「ならほっとくのか?それこそ天敵に狙われて死ぬじゃないか」
「それが自然の掟と言うものだろ」
「冷たいな。お前」
「…お前に言われたくなどない」

これ以上はらちが明かない。
そう思いツバサはこの場から離れる。


次の日また次の日と一日が過ぎていく。
ツバサはあの場所にはよらなかったが、窓の傍て様子を伺っていた。
予想通りヒナはあれから何度も落ち、その度彼が巣に戻す。


そんな日が何日もたったある日。

「ん、(今日は雨か…)」

ツバサ唯一の能力と言ったところか。
雨が降る、それは直感的にわかること。

傘を鞄にいれ学校に向かう。
午前中は降らなかったが、午後から結構などしゃぶり。
授業が終わったツバサは傘を指しあの場所へいく。

そこにはこの雨のなか何もささず、突っ立っている彼の姿。
彼は足音で分かったのか、ツバサが立ち止まったとき、口を開いた。

「お前の言った通りだったよ」

彼の前にはピクリとも動かないあのヒナの姿。

「……。」
「でもさ、」

そういい彼はゆっくりとこっちを向く。

「…!」
「目の前で困ってるやついたら、助けたいって思うだろ…?」

そういった彼は笑っていたが、目からは雨ではない涙が流れていた。
またヒナの方を向き、彼は小さく"助けてあげられなくてごめん"と呟いた。



どうして 貴方が
   泣いてるの?
((貴方にとってそれは
  別にどうでも良いことでしょう?))


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