彩りと反省文と音
「飯島ァァアーー!」
「観月君うるさいよー」
「女子怖い!」
「え、君モテたいんだよね?」
「あ、そっか。うん。なるほど、あれはもしかして照れ隠しだったのか?
なんだ、千秋のやつ女らしいとこあったんだな!」
「ソウダネー
(だから君はモテないんだよ。)」

千秋に渡すものを渡し終え、自身も弁当を広げる祐輔。
しかし広げる場所は自分の机ではなく紋の机の上。

「え、何?」
「一緒に食おうぜ!」
「どうして?」
「俺達友達だろ!?」
「へーはじめて知ったよ。
(女子たちのが羨ましかったんだな。)」

いつものテンションの祐輔に紋は深くつっこまず流す。
祐輔は祐輔で弁当の蓋をあける。そこにはいつものように彩り鮮やかなおかずがあった。

「毎回思うけど、君の弁当すごいよね」
「??」
「彩りとか、親毎日これ作ってるんだよね?関心する。綺麗だし」
「!」

紋がそういえば、祐輔は驚いた表情をし、でもすぐさま照れ笑いをした。

「なんか照れるなー!」
「別に君を誉めた訳じゃないんだけど」

紋がそう言うなか、祐輔は一口、また一口とおかずを口にいれる。
反応すべきとこでしない祐輔は、なかなかのスルースキルをお持ちのようだ。
口にいれたものを飲み込み、祐輔はまた口を開く。

「綺麗って言うの?俺よくわかんないからさ。でも誉め言葉ってのは分かる!」
「…綺麗がわからない?」
「おう、基準っていうの?俺よく見えないしさー」
「……君本当馬鹿だよね。頭良いのに」
「え!?何で!」

こればっかりは驚いたのか、祐輔は箸を止め、紋の方を向く。
動揺を隠せない祐輔に、紋はいつもの冷静な態度で言う。

「綺麗なんて基準、人それぞれじゃん。それを基準がわからないって」
「人それぞれ…??」
「そうだよ」
「……。なるほど、そうだったのか…

ありがとな、飯島!」
「?どういたしまして…?」

いまいち何に感謝されたのかわからない紋。しかし祐輔は少しスッキリしたような顔をしていた。
それからまたくだらない会話をしながら食事を勧める。
そこに、この学園の生徒会長である天疾が声をかけてきた。

「どしたんだ?」
「これ、先生から。書けって」

そういって手渡したのは読書感想文などに使われる原稿用紙。
意味が分からず“?”が祐輔の頭上に浮かぶ。

「図書室の利用時間過ぎた回数が500回を超した祝いの反省文」
「500…」
「あれ、もうそんなにいった?てか4月に書かされたばっかな気がするんだけど…」
「書くの嫌なら時間守れよ」
「いつも守ろうと思ってるんだけどねー。いつの間にか時間がね!」
「…まぁ一応渡したから。今週までに提出な。」
「ありがとな、夏目」

用を済ませた天疾はまだ生徒会の仕事があるのか、教室を後にした。
今日は読みたい本があるからこれは家で書こう。そんなことを呟きながら食事を終える。

「そろそろ部活行くかな」
「俺も図書室行こっかな」
「…時間守りなよ?」
「出来れば」
「……。」

そして、2人とも鞄を持ち文化棟へ向かう。

「あ、そういえば今日合唱すんのか?それともパート練?」
「どうだろう、途中合わせるかもしれないけど、どうかしたのか?」
「ん?あぁ、
図書室窓開けたら吹奏楽部の演奏聞こえるんだよ。音が本当気持ち良くてよ、最近のBGMなんだ〜」

幸せそうな笑顔をする祐輔に、紋は“へー”とだけ答えた。
図書室の中に入り、換気の為窓を開ける。
目的の本を手に取り、窓近くの定位置に座る。

しばらくすれば吹奏楽部の音が聞こえてくる。
居心地のいい環境に、少しだけ眠気に誘われ、祐輔は“少しだけならいいよな”とつぶやき本を閉じ、机に伏せた。



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