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積まれたダンボールに目がいき、片づけるかと呟く。
寮は2人1部屋。この寮は普通とちょっと違い、ロフト付きという面白い造りになっている。
ちらっと上を見れば同居人の荷物だろう、生活感漂うものが置いてあり、逆に下は机とベッドしかない質素なものだった。
考えなくともアユムは下。そして、ダンボールを開け、片づけを始めた。
片づけをはじめ、数分立ったとき、ゆっくりと部屋のドアが開いた。
中に入ってきたのは黒髪の少年。アユムを見て驚いた顔を浮かべたが、すぐさま笑顔を浮かべる。
「君、もしかして九アユム君?」
「…あぁ、そうだけど」
「初めまして!僕の名前は四篠ヨウ。今日から同じ部屋だね。よろしくー」
「よろしく…」
「何かわからないことあれば気軽に聞いてよ。答えれることならなんでも答えるからさ」
「どうも」
終始笑顔でそういう少年にアユムは淡々とした返し。
少年は一瞬ぽかんとした顔をしだが、すぐさま笑い出した。
「何だよ…」
「嫌々、ごめんって!もしかして緊張してる??だとしたら意外だなーって。見た目そんな悪いのに!」
「!…喧嘩売ってんのか?」
「え?いや、そんなつもりはないよ!ごめんごめん怒った??」
「……。」
まだおさまらないのか、ヨウという少年は未だ笑っている。少年を無視して片づけの手を進めるアユム。
怒ったの思ったのか、少年はアユムに近づき顔色を伺う。しかし相変わらず笑ったままだ。
「ねー怒ったの??」
「……。」
「ヤンキーってやっぱ沸点低いの?てかヤンキーだよね?」
「…うるせぇ!」
そう少し声を上げて言い、後ろにいる少年の方へ手を振り回す。
あてるつもりはなく、直前で手を止める予定だった。
しかし、止めた時すでに少年の姿はそこにはなく、何がおきたのかアユムはその場に倒れこんだ。
うつぶせに倒れ、背中に重み、左足に痛みが走る。
「ヤンキーってやっぱ手が出るの速いんだな。」
何がおきたのか、すぐにはわからなかったが聞きなれたこの声ですぐさま理解した。
背中の重みは間違いなくあの少年だろう。
そして足の痛み。
恐らく少年はアユムが手をあげた瞬間かわす目的でしゃがみ、無防備なアユムの足に思いっきり蹴りを加えバランスを崩した。
そしてアユムの背中に座る。ご丁寧に片手も後ろで固定。
アユムは決して弱い方ではないが、少年の動きには全くついていけなかった。
「こんな時期に転校してくるからどんな奴かと思ったら。」
大したことないんだな。」
「……ッチ」
今までの笑顔はどこへやら。感情を全くこめていない顔で冷たくそう言い放つ少年。
空いている方の手をアユムの首元に近づける。いつの間に持ったのか、刃が出たカッターをピタリと首につけた。
「遊びできたんなら今すぐ帰りなよ。今の君なんかすぐに死ぬ。」
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