1
いつものようにみんなと食事をし、いつものように仕事へ行き。
いつものように職場の人の会話に相槌をうち、いつものように帰宅。
明日もまたこんなことを繰り返していくのだと思ってた彼。
しかし、
平凡な日常は、いつでも簡単に崩れ去る。
「なん、だよ…あれ!」
いつものやる気のない顔はそこにはなく、アユムは必死な顔で何かから逃げていた。
――――――
―――
さかのぼる事、数分前―
仕事を終えたアユムは、くたくたになりつつゆっくり自身の家に帰っていた。
特に用もないため、昨日より歩く早さは遅め。
今日の夕飯のことを思っていると、前方の電信柱の下に何か黒い物体があるのが見えた。
猫にしては少し大きい気もするが、大して興味もないアユムは普通にその横を通り過ぎる。
「オイ…しソ、う」
「!?」
子供の様な声でなにやら恐ろしい単語。すぐさま声のする方へ振り返る。
しかし、後ろには誰もいない…。
「気の、せい…か?」
そうつぶやいて再び前を向くと―
「!!」
道の真ん中に何やら黒い物体が立っていた。大きさは大体幼稚園児くらいで短い足と地面まで付きそうな長い腕。
今まで見たことのないものに驚きを隠せないアユム。驚きとともに、アユムの頭にはもう1つあった。
―早くこの場から逃げなければ、と
するとダラっとおろしていた奴の片腕が口元へ行き、不気味な笑みを浮かべる―
その瞬間、ものすごい速さでこちらに飛び込んでき、その長い手をアユムの顔めがけて振り下ろしてきた。
「…ッ」
何度も喧嘩に巻き込まれたおかげ、といったものか。頬を少しかすったが、直撃はなんとかよけることが出来た。
かわしたことに続いてアユムはこの場から走り去る。
チラッと後ろを向けばあの黒い影も諦めず追いかけてくる。
「なんなんだよ、クソッ!」
prev /
next