Another desire | ナノ


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「九さんは後天性なんですよねー。」
「後天性?」
「その通り後から能力に目覚めた方のことですー。
払い屋の能力は主に潜在型なのですが、それには2タイプ、先天性と後天性がありますー。潜在型は元々能力を持っている人達でー、先天性は生まれたときからすでに能力に目覚めているかたですー。
九さんは四篠さんと同じ部屋なのですよねー?四篠さんはたしか先天性でしたよー!」

あのチビの話になり、急に冷めるのは昨日のやり取りのせいだろう。
俺の反応を見て、あいつはまた笑い、話を続けた。

先天性は生まれながら能力者であり、能力に触れている期間が長いこともあるが、それでも後天性より力が強いこと。
だが、幼い能力者は自分を守るすべも知らず、能力を他だ漏れになり狙われやすいこと。
機関でその子達を保護しようとしているが、人の手で見つけるのは至難の技であること。

「それなりの名の通った家ならその子息が能力者で生まれることが多いので保護しやすいのですが、遺伝と関係ない方も多くてー。
僕達は夜虚とちがって鼻も聞きませんしねー。」

保護ができなかった結果ははっきりと言わなかったが、何となく察しがついてしまい言葉につまる。
俺も、あのときもしあいつがいなかったら死んでいたのだろうか…。そう最悪の場合を想像してしまいそうになったとき、ふと疑問が浮かんだ。

「能力者は狙われやすくて、子供ならなおさらなんだろ?
なら能力者って結構少ないんじゃ…。」
「おぉー!偏差値がこの学校に遠く及ばない九さん!するどいですー!」

誉めて差し上げますーと動く口を摘まみ言葉を封じる。
どもった声で痛いと言い続けていたので、切りのいいところで手を離す。

「ううぅ…ほほが痛いですー。ヒリヒリですーー。」
「自業自得だ。」
「事実をいったまでですのにー。」
「……。」
「話を戻すですー。
九さんのいう通り、先天性はかなりの割合で祓い屋になる前に倒れてしまいますー。
ですが、後天性は別ですー。」

能力者であれば能力者を感じることができる。それはもちろんある程度近くにいないとだめなのだが。後天性は能力が開花したとき、瞬間的に能力がはね上がる。
それで発見の頻度が高まるのだと言う。

「九さんもこんな展開だったのでは?」

その言葉に頭をたてにふる。ここの学生だったことを言えば、それはあいつも驚いたようで、その方はかなり実力のある人だといった。

「まぁ、そんな感じで、祓い屋の方は後天性が大半です。あとは術によるものですね。」
「術?」
「先ほど能力者は主に潜在型だと言いましたー。ですが術によって一般人だったひとでも祓い屋になることができるのですよー。
ただしそれ相応の覚悟がないとダメなんですけどー。」

能力がなくても見える人は結構いる。その人たちは力はなくても器があるため、戦いたいと思えば、術により力をもらえるというシステムだ。

「戦いたいなんておもうやつがいるんだな」
「祓い屋は給料もいいですし、それなりに名も良いですからねー。」
「さっきの家柄とかか?」
「はいー。世間一般でなが知れているとこはほとんど祓い屋家系という噂もありますー。
四篠さんも武道の方面では知らないものはいないってとこですし、祓い屋でも高位の家ですー。」


ぼんぼんかよ…。だからあんな生意気な性格なのかと気分が下がる。
そういえば朝の目覚まし。確かにかけてあったあれはもしかしたらあいつが消したのかもしれない…。
やるならあいつだけだ。そう今にも殴りたい気持ちを押さえていると、そいつは「彼も大変な人だ」とつげた。

「なんでだ?」
「先天性って、それだけでレアなんですよー。だから危険が伴ってでも先天性として生ませたいって感じですねー。まぁ、名が知れてるということは、力も強いわけで、ちょっとやそっとじゃ子供さんも死なないので安心なのですがー。」
「……。」
「名家だと、能力がなくても術で能力もたされますしー。
それに彼はー…。」

なにか言いかけようとしたが、なんでもないと言葉をやめる。
気になるといっても、個人情報だと言いださない。(今までのは個人情報じゃねぇのかよ…)

"君なんかすぐに死ぬ"

そういって刃物を向けてきた彼も、命の危険を感じることが幾度とあったのだろうか…。
それでもやはりあの態度が気に入らずイライラする。

「あなた方は良いコンビになりそうですねー」
「は!?」
「はははー。お母さんは嬉しいですー。」
「誰がお母さんだ」

茶化しが落ち着いたところでそろそろ購買へ行こうと言われ、席を立つ。
案内をしてあげると先に教室からでたそいつの背中を見て、

「お前は何でなろうと思ったんだ?」

そう問うた。
こいつは学校のこともしっており、四篠の家や、アイツ自信のこともすこさ知っているらしい。
だが、今まで話してきたなかでいちども自分のことは言わなかった。休学の理由もだ。
これなら教えてくれるかと思ったが、一瞬"寂しそう"な目をし、すぐ笑顔で

「皆さんを救いたくて。」

と言った。
なぜだかわからない。今日あったばっかでこいつのことなんてなにも分からないのに。
なのにすぐ、今言った言葉が"嘘"だと感じた。


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