Another desire | ナノ


  3


小さな紙に連れられ、寮監室前についた2人。幸いなことに、着くまでこのみじめな姿を誰にもさらすことはなかった。
手が縛られてる中、どうやってドアを開けようかと悩んでいると唐突にドアが開き、紫色の髪の青年が姿を現した。

「いらっしゃい」

2人を中に迎え入れ、椅子に座らさせる。すわった瞬間紙はとれ、人型の紙は紫髪の青年の肩にとびのった。
青年のほうはお茶を3つ用意し、2人に出すと同時に自分も席に着く。

「まずは自己紹介だね。僕はこの寮を任されてる日紫喜恩。何かあったらいつでも相談に乗るから、気軽に声かけてねー。」
「はぁ…」
「んで本題だ。」

お茶を一口飲み、さっきから変わらず笑顔で話しだす恩。
ここは一般の子も生活しているため、争い事はNGだということを特に力を入れ説明され、そのあとは寮についての簡単な説明を受ける。その間二人は静かに聞いていた。
話の途中チラッとヨウのほうを見るが面倒な顔一つせず真面目に聞いている。今話していることはもう周知の事だろうに。

「でも珍しいね。四篠君問題起こすような子じゃないと思ってたのに」
「そんな!ちょっとからかっただけですよー。あ…、もしかして日紫喜さんの印象悪くしてしまいましたかね…?」

困り顔で訴えるヨウに恩はまたにこっと笑い、全然だよと声をかけた。

「君の意外な一面が見れて面白かったよ」
「日紫喜さんに楽しんでいただけたようで僕の方もうれしいです」

誰だこいつ。思わずそう言いたくなるようにヨウの態度はアユムの時とがらりと変わっていた。
しばらく話をし、そろそろ夕飯時ということで部屋から出る二人。「もう乱闘したらだめだからね」と最後にくぎを刺されつつ、ヨウは笑顔で「失礼しましたー!」とドアを閉めた。

途端―

「ッチ…成績落ちたらどうしてくれんだよ」

さっきの笑顔はどこへやら。鋭い睨みを効かせてアユムを見る。
驚きの変容ぶりに拍手を送りたくなる。

「部屋は変えられないし、日紫喜さんにこれ以上の迷惑かけれない。我慢してやる」
「なんでそんなに上から目線なんだ」
「今僕がしゃべってるの。黙って聞いて」
「……。」
「部屋の事は我慢してやる。だから…僕のテリトリーに髪一本も入れないでよね…。入れたら…」
「…。」
「ぶっ殺す…」
「(っていうと思った。そしてこいつなら本気でしそうだ。)」

祓い屋になるための勉強よりも、こいつと一緒にいる方がつかれそう。
ため息を大きくつき、アユムは食堂へ向かいヨウへの後をついて行った。


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