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「……。」
「あれ?ビビって声も出ない感じ?」
カッターを突きつけたまま、楽しそうな顔をするヨウ。対するアユムは先ほどから何の反応も示さない。
そんなアユムつまらないと感じたヨウは、何か面白いものはないかと一瞬アユムから目をそらす。
「!」
うつぶせに倒れているアユムに今の一瞬はわからなかったはずだ。
にもかかわらず、アユムはその一瞬でヨウを退け上にのる。
「調子のんな、クソガキ…」
「!」
下に敷かれたヨウは、余裕な顔をしていたが、アユムの顔を見て目を見開いた。
アユムはまた気が付いてはいないのだろう。
今回は片目だけだが、瞳の色がまた変わっていることに―
一度は驚いた顔したヨウ。しかしそれは徐々に引いていき、今度は口元を釣り上げた。
「それはこっちのセリフだよ」
「…!」
「そんな半端な力で僕にかなうと思ってるの?」
怒りが混じった笑みを浮かべそう言うヨウの瞳は、あの鎖の少年同様光を灯していた。
「先に使ったのは君なんだからね。」
「お前…」
「ぼっこぼこにしてやるよ」
そう言ってアユムの腕をつかみ、力を入れる。
見た目とは想像もつかない力に怯むアユム。ヨウはそのまま腕をつかんだ手を引き、アユムを倒し、距離を取る。
「チビだからすばしっこいな」
「そのチビにやられてる気分はどう?」
「…最悪だ!」
アユムの一言が掛け声となり、二人は一気に距離を詰める。お互いの拳が相手をとらえようとした瞬間―
「「!」」
「はい、そこまでね。」
無数の長い紙が二人を捕らえ、動きを封じた。
「寮内でのもめごとは厳禁だよ。2人とも直ちに寮監室にくるよーに」
「…日紫喜さん」
「…!?」
声はするがこの場にはアユムとヨウの二人しかいない。
体を縛る紙をたどっていけば、そこには人形に切り取られた紙が、まるで生きているかのように立っていた。
「…!?」
「はぁ、君のせいで面倒なことになったじゃないか」
「は!?元はといえばお前のせいだろ!」
反論するアユムを放って置いて、縛られたまま部屋から出ようとするヨウ。
「おい、どこいくんだよ」
「は?君の頭脳みそ詰まってるの?」
「あ゛?」
「寮監室だよ。この紙は日紫喜さんの能力。日紫喜さんのとこいかないととれないんだ。」
「……。」
「このまま君と一緒に縛られてると馬鹿がうつる。そんなの耐えられない…」
嘘らしい涙を目に浮かべそう言うヨウ。アユムは心の中で絶対泣かすと思ったのは言うまでもない
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