Another desire | ナノ


  2


全く別の方向に歩いていたアユム。さっきの女性のおかげで何とか職員室に着くことが出来た。
少し緊張しつつ中に入れば、平日で普通に授業があるからだろうか、先生の席には空席が目立つ。
室内を見回し終えた時、男性教諭の声が響いた。

「何か用か?」
「え、」

いきなりで驚いたアユムだが、とりあえず声のした方を向く。
そこには、コーヒーを片手に数枚のプリントの黙読している眼鏡をかけた男がいた。声は確かにその男の方からしたが、男の目線は全くアユムの方には向かない。
こいつじゃなかったのかと思いまたあたりを見回すが、

「ハハ、君面白いな」
「!?」

やっぱりさっきの方から声が聞こえた。
眼鏡の男の方を向くと、今度はさっきの表情とは一変、面白いおもちゃでも見つけたかのようにアユムの方を見て笑っていた。

「野良猫みたいだ」
「っな!」
「まー。そう怒んなって」

両手を上げ、降参といった態度をとるが、表情はやはりゆるい。
男は残り少ないコーヒーをぐいっと飲み、読んでいたプリントを置く。そして机の横に置いてあった封筒を持ってアユムの方に来た

「?」
「お前、九アユム君だよな?」
「…あぁ」
「俺、七海真人。明日から君の特別クラスの担当な」
「……
  はい?」


――――――――
――――

それからその男に連れられ、校内を案内してもらった。方向音痴ではないアユムだが、これは覚えるのに時間がかかりそうだ。
一通り案内し終えると、今度は会議室のような部屋に入る。
机を間に向かい合う形で座れば、

「入学に必要は手続きはもう終わってるから、この中に入ってる書類明後日までに提出よろしく。
制服とか教科書は寮の方にもう送ってある。」

そう簡単に言って校内案内中ずっと持っていた封筒をアユムの方に渡す。

「あぁ、あと明日は健康診断だから。」
「…はぁ」
「一通り終わったか?何か質問は?」
「……。」

封筒の中身を透かしてみようとしていたアユムに真人のその一言。
聞きたいことは山ほどあるが、アユムにはまだまだ分からないことが沢山ある。こう聞かれてもなんと質問すればいいのかわからなかった。

「えっと、とりあえず特別クラスってなんですか」
「あぁ、この学園は聞いてると思うが世間一般から見たらちょっと有名な進学校だろ?」

そう言われ、ちょっとじゃないだろと思いつつ頷き返すアユム。

「でも御社学園がある本当の理由は夜虚を祓う祓い屋を育てる事。そしてお前がここに来た理由も祓い屋になること。」
「…(コクン」
「祓いについての勉強は入学と同時に対象生徒に行われる。だから途中入学した生徒には、クラスに入る前に他の奴らがそれまで習ったは知識を学ばないといけない。それで特別クラスってのが出来たんだ。
……でもま、ぶっちゃけるとお前の成績やばいからな。中学の復習も含めする特別クラス中の特別クラスだな」
「……。」

良い笑顔でそう言う七瀬。アユムは無性に謝りたくなったが、口を閉じ黙り込む。何となく、あれだ。プライドだ。

「まぁ気にすんな、それに今回はもう一人いるからな。」
「もう一人?」
「あぁ。俺も詳しくは知らないけど、ずっと休学してたみたいでな。」
「へー」
「まぁ、他に何か分からないことがあれば同室のやつに聞け。成績上位のいい子だから」
「……。」

成績上位と聞いて、パッと浮かぶのはがり勉のくそ真面目な野郎。正直気が合わないだろうなと直感で感じた。
その後、寮まで案内してもらい、アユムはやっと一息ついた。

「御社学園…か、」

部屋に積まれている段ボールを横目に、部屋のソファに腰を下ろし鎖の少年とのやり取りを思い出していた。

 

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