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鋭い音とともに無数の鎖が地面に刺さる。3匹のうち2匹がその鎖の餌食に。
「あ、1匹外しちゃった。」
「……。」
暢気にそういって鎖を一本引き戻し、慣れた手つきで再び放つ。
まっすぐ飛んだ鎖は逃げた1匹の頭を貫通する。
黙ってその様子を見ていたアユム。しばらく呆然としていたが、突き刺さった鎖が引かれ嫌な音が耳に届いた時、思わず口元を抑えた。
「初めてこの光景見る人って、君と同じ反応ばっかりなんだよね。なんだか傷つくな」
「お前一体…。」
「君と一緒だよ」
「は…?」
彼は現れた時と同じ軽い調子でまた話だす。
「まずはさ、あれ見てよ」
そう言って彼は刺され動かなくなった奴らを指差す。アユムが見た瞬間、それらは少しずつ蛍のような光となり天へ上がって行った。
「オレたちはさ、アレを殺したっていうより成仏させたっていう表現の方が正しいんだよね」
「成仏…?」
「彼らは元々俺たちを陰で助けてくれてた存在。それなのに、人間の恨みという負の感情のせいで暴走してしまったんだ。」
「……。」
「彼らを楽にさせれるのは俺たちだけ。だから俺は…」
「…?」
言葉の途中で急に黙る彼。アユムは不思議そうに彼の顔をのぞこうとするが、振り返った彼はまたあの笑顔でアユムに話しかける。
「君はどこの学校の子なんだい?」
「え…、学校は、行ってない…」
「そうなの?高校生ぐらいだと思ったんだけど」
「……。」
「事情ありって感じかな。」
黙るアユムに何かを感じたのか、彼はまた軽く笑う。
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