3
『俺らには親がいないから』
「!」
ふと聞こえる懐かしい声
『親がいない俺たちは、この先何があっても死ぬのは一人だ。
俺は別に一人でも構わない。人は何でも簡単に裏切るから。
でも…、
理不尽に死ぬのは嫌だ。
わけもわからず死んだら、何のために生まれてきたのか分からない。』
アユムが施設に来てから仲良くなった彼。数年前いきなり姿を消してから今も…。生きてるのかさえ分からない状況だった。
幼いとき、ある事件に巻き込まれ大けがをした彼が、ベッドの上ではっきりとそういった言葉。その時の目が今でも忘れられないものだった。
なぜいきなりこんな言葉を思い出したのか。
それもアユムにはよくわかってないが、生きることをあきらめてはいけない…そう思い始めた。
「そうだ。またあいつに会うんだ…。
あっていきなり消えたことを問いただして一発殴る…。」
俺は、まだ死ねない―
「ギッ!?」
「…ハァ。」
ため息を1つつき、瞼をゆっくり開ける。再び見える路地景色とあの物体。足から感じる痛みといい、やっぱり夢じゃなかったかと残念に思う。
1つ違うのは今まで好戦的だった奴らが少し後ずさっていることか。
何もしてないが、もしかしたら今有利な位置にいるのか、そう思うアユムは強気の姿勢でいるが、相変わらず奴らと戦うすべがない。
逃げ出したい気持ちもあったが、ここで引いては一気に形勢逆転。すぐさま殺されてしまう。
「(どうしたら…)」
必死に考えるアユム。しかし、もともと悪い頭で何かいい手段が思い浮かぶはずもなく、冷や汗ばかり出てくる。
緊張した空気、それを感じていないのか、場違いな声が響く。
「やぁ、もしかしてギブアップかな?」
「「「「!!?」」」」
声のする方を向けば家を囲っている塀の上に座り、足をばたつかせながら笑っている少年がいた。
「…(ニコ」
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