ミスとミスターの熱愛劇



注意事項とΩバースについて
(読む前に必ず目を通してください)

※まずR18ですので、ご注意ください。

<Ωバース>
簡潔にまとめています。
男性・女性の他にα(男女)β(男女)Ω(男女)の第2の性、6種類の性別が存在。

α:支配階級。身体機能・知能が高くなりやすいエリート体質
β:中間層。数が一番多い
Ω:下位層。発情期を原因として社会的に冷遇されている

<Ωの特徴>
三か月に一度、発情期(ヒート)が来る。
番のいないフリーのα(時にはβ性)を強く惹き付けるフェロモンを発する。
抑制剤で物理的に発情期を抑えることが可能。
好意を寄せた相手の私物を盗んだりするネスティング(巣作り)という習性がある。


<αの特徴>
発情中のΩとの接触は、どんなに理性的なαであっても抗しきれない強烈な発情状態を引き起こす。そのためΩを蔑んでいる者もいる。


<番について>
αとΩの間にのみ発生する特別な繋がり。
性交中にαがΩのうなじや頸、喉元を噛むことにより、Ωのフェロモンが変質し以降発情期が訪れなくなる。通常の恋人関係や婚姻関係よりも強いものとされ、一旦番になるとどちらかが死ぬまで解除されないと言われる。
以後は番とのみ行為に及ぶようになる。


以上です。
詳しいことはピクシブ百科事典をどうぞ。








 日本有数の名家の跡取りとされ幼い頃から英才教育を施され育てられたオレは、大学を卒業した後すぐに複数の会社を持つ父の後を受け継いだ。父はとても優秀なαだ。当然その血を引いた自分もαである。そのため父の会社にはαとβの男女で成り立っていた。Ωがαにとって仕事上迷惑な存在でしかありえないため、父の下で育ったオレは物心つく頃からΩを蔑むように教えられて生きてきた。

 当然、オレの周りにはΩの人間は存在しない。


 そのはずであった。



「苗字の仕事振りにはいつも感心する。着々と結果を出しているね」
「ありがとうございます」

 大きなディスクを挟んで目の前に立つ彼女は、嬉々として深く頭を下げた。
 彼女、苗字名前は、去年オレの会社に入社してきたばかりのとても優秀なβである新人部下だ。既に何年もいる周りのβとは比べ物にならない程、スキルが突出していて尚且つ周りの妬みや上司からの期待のプレッシャーにも圧し潰されない強いメンタルも兼ね備えていて、今ではこの会社には必要不可欠の部下であった。
 だからといって、βの一人である彼女に対して特別な感情などない。
 所詮αの部下。手足だ。彼女もその一人に過ぎないが、とても優秀な部下であるためオレは大事に扱っていた。

「赤司社長の期待に更にお応えできるよう、精進して参ります」
「あぁ、期待しているよ。もう下がっていいぞ」
「はい、失礼致します」

 穏やかな日々が過ぎていく。
 だが、そんなある日。

「・・・ない」

 出先から戻る度、日に日に私物が失くなることが続いた。
 今日もそうだ。外の気温が高かったため、スーツのジャケットを室内に置いていたのだが戻るとそれが失くなっているのだ。


 今日はジャケット。
 その前は腕時計。
 更にその前はネクタイやハンカチ。

 流石に不審に思う。
 誰かが盗んでいるとしか思えない。
 部下の中にはβしかいない。その中に自分のようなαに憧れ羨む者もいるが、私物を盗む程の好意を自分に寄せている部下がいただろうか。思い当たる節はなかった。そこまでプライベートに進む程親しく接している部下は一人もいない。だが、苗字だけは少し特別に扱っていたことと部下の中で一番共に過ごす時間が長いことを思い出し、まさかと彼女に疑念を抱く。

 社長室を後にしオフィス内にある苗字のディスクにこっそり歩み寄る。きちんと整えられているディスク周りに特に不審なところはないが、ふと椅子の奥に隠すように置いてある紙袋に気付いた。椅子を引きその紙袋を取り出してみると、中には見覚えのあるスーツのジャケットが綺麗に折り畳んでありまさかと確認すると、オレが愛着しているブランドの物でサイズもピッタリ合っていた。間違いなくオレのジャケットである。
あまりの衝撃にその場に立ち尽くした。

 万が一、彼女が自分に好意を寄せていたとしても私物を盗むのはいくら何でもタチが悪く言ってしまえば犯罪である。とても大事な部下である分、そのショックは大きかった。


 その日の勤務終わり、オレは苗字を社長室へ呼び出した。
 ノックをして「失礼致します」と遠慮気味に入ってくる彼女は、特にいつもと様子は変わらずオレが何用で呼び出したのかも理解していないようであった。

「どうして呼び出されたのか、わかるかい」
「いえ・・・・・・仕事に関してのことではないんですか?」
「あぁ、違う」

 そう短く返したオレに、初めて苗字の表情が固くなる。

「最近、オレが出先に赴いている間私物が失くなることが続いていてね。苗字は何か心当たりはないかと思って呼び出したんだ」
「・・・ありません」
「そうか。すまないが苗字のディスクの下に隠すようにしまってあった紙袋の中身を見たんだが、あれについて説明をしてくれないか」
「!」

 彼女は肩を小さく揺らす。わかりやすいと思った。
 途端彼女の顔色が悪くなり、困惑した面持ちでオレを見つめる。

「あ、あれは・・・その、彼氏のジャケットを今日借りて羽織ってきたんです」
「彼氏、か。その彼はオレと同じブランドでサイズも一緒の物を着ているんだね。オレが今日失くしたスーツのジャケットと全く同じ物だ」
「・・・・・・」
「はぁ・・・・・・見え見えの嘘は必要ないぞ。オレは君に期待しているんだ。会社にとって君はとても必要な人材だ。こんなくだらないことでオレを失望させるな」
「・・・・・・」
「何故、盗った?何の意味がある?ブランドの物だから売るつもりだったのかい?」
「ち、違います・・・」
「なら何だ」

 少し強めに返すと、彼女は俯いたまま口を紡ぐ。
 このままでは拉致があかない。いつまでたっても解決しないだろう。溜息が零れる。

 ディスクに片肘を付き、頭を凭れ待つオレに彼女はようやく顔を上げた。その瞳からは涙が止めどなく頬を伝っていていつも見てきた強気な彼女とは対照的で不覚にもドキリとしてしまう。

「・・・すみません・・・赤司社長、本当に、すみません・・・」
「・・・謝ってばかりでは何もわからないぞ」
「私・・・辞めます。この会社を・・・辞めさせてください」
「何を勝手に・・・お前に辞める必要があるかどうかはオレが判断する。盗んだ理由を聞いているんだよ」
「・・・言えません」
「・・・・・・」

 その場で蹲り顔を両手で覆い隠し嗚咽を漏らす苗字に、ヤレヤレと溜息が再び零れる。椅子から立ち上がり歩み寄ると泣きじゃくる彼女の前にしゃがみ込み「苗字、顔を上げろ」と仕方なくハンカチを差し出した。
 ゆっくりオレの方へ顔を上げてそのハンカチを震える手で受け取った彼女とオレの指先が僅かに触れた瞬間。

「ひゃあっ!!」
「!?」

 そう甲高い声を上げて体制を崩した彼女に、オレも何事かと目を丸くする。手先が触れたことにビックリしたのだろうか。今までも仕事中に数えきれないほどあったはずだが、今日の彼女は少し様子が可笑しい。尻もちを付いて胸元を掴むように抑え俯く苗字の顔を覗き込むと、呼吸がとても荒かった。

「・・・苗字、大丈夫か。体調が悪いのかい」
「・・・違う、んです・・・、」
「・・・言えないことなのか」
「・・・話、たら・・・赤司社長、私のこと、助けて・・・くれますか?」

 顔を上げた彼女の白い肌は紅潮していて、切なそうにそう訴えてきた。
 自分ができる範囲内のことであれば、助けてやりたいと思ったオレは小さく首を縦に振る。だが、続けた彼女の言葉を聞いて酷く困惑した。

「わ、私・・・本当は、βじゃ、なくて・・・Ωなんです・・・抑制剤が切れ、てきて・・・苦し、いんです・・・」




 ミスとミスターの熱愛劇




 私は、Ωである。
 三ヵ月に一度訪れるヒート(発情期)を持つΩは、社会に冷遇されている。
 その為、抑制剤を服用しΩがβに偽って社会に紛れ込んでいるケースがある。私もその一人であった。
 大学卒業後とある有名な会社に入社することができそのトップに立つ赤司征十郎という男に憧れを抱くようになり、自分も彼のような人間になりたいと思い許す限りの時間を仕事に費やしてきた。Ωである私がβに偽って入社してから早一年、バレたこともなければ自ら抑制剤を飲み忘れるなどのボロを出したこともない。
 
それが続くと思っていた。

 だが、赤司社長にスキルを認められ優遇されるようになってから身近に置かれるようになり、彼と過ごす時間が日に日に増えて行った。それくらいで心が惹かれる程単純な私ではなかったが、昼食を摂るため共に外食した際のただの部下である私に対し彼の何気ない気配りや残業している私に差し入れをしてくれたり、毎日仕事のモチベーションを維持するための一つとして髪型やメイクに拘る私に気付いては褒めてくれたりなど。仕事上嫌でも毎日顔を合わす赤司社長に対し私は気づけば恋愛感情を抱くようになってしまっていたのだ。
 
 これは、非常に不味いことである。
 だがそう気づいた時はもう手遅れだった。
 赤司社長が出先に赴いていて留守の時にこっそり書類を提出するフリをして私物を盗ることが、習慣になってしまった。
 Ωにある習性の一つ、ネスティング(巣作り)だ。
 無意識にしてしまうもので、もはや抑えが効かずどうにもならないのだ。

 日によって大きくなる赤司社長に対しての想いに、抑制剤を服用することも辛くなってしまう。何故なら私は彼の番になりたいと思い始めていたからだ。


 だが、今日赤司社長に呼び出しを食らいその理由が私がネスティングにより盗ってしまった彼のジャケットに関してのことだったのと今日に限って追加の抑制剤を服用し忘れてしまった私は、流石に言い逃れできないと覚悟を決めた。

「わ、私・・・本当は、βじゃ、なくて・・・Ωなんです・・・抑制剤が切れ、てきて・・・苦し、いんです・・・」

 助けてくれると頷いてくれた彼に心を許してしまった私は、自らΩであることを暴露してしまった。もう後には引けない。大きく目を見開いて穴が空くほど見つめてくる赤司社長に、私は耐えれずハンカチに顔を埋めた。
 αにとってΩは仕事上迷惑な存在でしかない。それはいくら優秀な部下であるとしても、彼にとってもΩの私はそうでしかない。

「ご、ごめん、なさい・・・ごめ、なさい・・・!」
「・・・・・・苗字、」

 優しい彼はΩだと分かった後でも、拒絶する身振りはなく手を伸ばしてくれた。だが「・・・ぅっ、」と小さく唸った赤司社長に僅かに顔を上げる。その酔いしぐれたような様子にハッとした。現在三ヶ月に一度くるヒート(発情期)であり抑制剤が切れた私のフェロモンはαにとってはとてつもない甘い匂いで、抗しきれない強烈な発情状態を引き起こしてしまうのだ。
 膝を付き荒い呼吸を繰り返す赤司社長に、私は体制を直し寄りそうように身体を密着させた。

「社長、私物を、盗んだのは・・・Ωに、ある習性の、せいなんです・・・っ・・・」
「・・・習性・・・・・・?」
「好意を、抱いた相手の、私物を・・・無意識に、集めちゃうんです・・・、」
「・・・それは、つまり・・・」
「・・・はい、私、赤司社長の、ことずっと、好きだったんです・・・」
「・・・!」

 私を見つめる発情した彼の表情に、もう我慢ならなかった。
 好きな相手のその情熱的な眼差しと荒い息遣い、僅かに紅潮した白い肌に身体が熱に犯される。下腹部がきゅんと疼いて仕方ない。堪らず上着を脱ぎ出すとそれだけでも大きく反応を見せた赤司社長に更に高揚した。

「はぁ・・・ハ、あっ、赤司社長、熱いです・・・っ・・・」
「くっ・・・苗字、」

 赤司社長の限界が訪れた。
 私を手荒に押し倒しその上に覆いかぶさると滅茶苦茶にキスをされる。破られそうな程荒々しく身に纏っている衣服を剥ぎ取られ、一度唇を離すと肩を上下させながらネクタイを解き床に捨てる彼が酷く色っぽくて息を呑んだ。秘部から愛液が溢れかえるのがわかる。そのぐちゃぐちゃになったソコに赤司社長の固く膨張したものが一気に奥まで入ってきて、私達は身体を繋げた。

「あ、あぁ、ンあっ、はぁっ、きもち、アッ」
「・・・っ、締め付けがすごいな・・・っ、」
「んっ、赤司、社長・・・あっん、」
「ハ、・・・今は、名前、で呼んで、くれないか・・・!」
「はあっ、あぁっ、征十郎、すき・・・んっ、ァ」
「・・・はぁ・・・・・・名前・・・、・・・」
「あぅっ、もっとぉ・・・もっとはげしく、してっせいじゅろ、んっ」

 一層赤司社長の腰の動きが速くなる。
 奥をぐりぐりされて意識が飛びそうになる程全身が快感に溺れた。赤髪を揺らしとろんとした目で私から目を逸らさず見下ろしてくる彼に酔いしれて絶頂が近づく。

「ふあっ、あっ、あぁっ、きもちぃっ・・・あっン征十郎ぉ・・・っ、」
「オレも、気持ちいいよ・・・名前・・・・・・」
「せ、征十、郎っ、私と・・・番っになってぇ、お願い、」
「!・・・っ」

 彼の手を取り自らの頸に導く。
 番になるには、αがΩの頸を噛むことで契約が交わされる。
 ゆっくり赤司社長の顔が近づいてきて、覚悟を決めた。







 番。
 そう息を乱しながら懇願してきた苗字に、オレは一瞬フリーズする。
 Ωとαの番が契約を交わしたら、どちらかが死ぬまでその契約を解除することはできない。
 別に、苗字のことが嫌いではなかった。
 今までは上司と部下の仕事だけの関係。先程の私物を盗んでいた彼女の失態を知った時は心底失望したが、Ωの習性の一つネスティング(巣作り)だとわかれば、仕方のないことだったと納得して今では許してしまっている自分がいる。
 そして三ヶ月に一度のヒート(発情期)から彼女を助けるには、αである自分がΩである彼女と番になるしかない。番になれば以降彼女がヒート(発情期)を起こすことはなくなるのだ。これから彼女はオレだけを求めるようになり、このまま会社に居続けることも可能になる。何より自ら腰をうねらせオレを欲してくる陶酔しきった可愛い彼女を、他のαに渡したくない、そう思った。
それならば手段は一つしかない。

 少しスピードを緩めていた腰の動きを再び速めれば、苗字は甘い嬌声を上げた。

「わかった・・・苗字がオレと、番になりたいのならっ、契約を・・・交わそう、」
「あっ、あぁあっ、うれしい、はあっ、ア、征十郎・・・も、イっちゃう、」
「あぁ・・・ナカに、出すぞ、名前、」
「ああっん、あ、くる、アァ―――、ン・・・っ!!」
「・・・くっ・・・っ!ぐ!」

 白い衝撃が身体を貫く。
 彼女の中に出し切れないほどの欲を注いだ。達した彼女の頸に唇を這わせ、そこに噛み跡を刻む。これでオレと彼女は番となった。

 それから彼女はオレとの子供を孕み、家族が増え、彼女と番になったことで得た絆と確固たる愛情がオレ達の関係を満たし充足させ幸せな日々を過ごしている。



2020/08/14  Fin

<あとがき>

まずリクエストしてくださった鈴様ありがとうございました!
大変お待たせ致しました。
一番最初にリクエストを送ってくださり、とても嬉しく思いました。
ただΩバースというものを、恥ずかしながら一度も耳にしたことがなくお題メールを開いた時に「???」となったのをよく覚えています。笑
これは曖昧にしては行けないと思い、時間ができたらΩバースの作品を実際読んだりしてみようと思いまして、時間がかかってしまいました。
Ωバースについても調べてみたら設定がかなり細かく面白いものだったので、自動的にR18になってしまいましたが書いていて楽しかったです。
新しいジャンルに触れる機会も与えてくださり、感謝しています!
気に入って頂けるかわかりませんが、読んでくださったら嬉しいです。

この度はリクエスト、本当にありがとうございました。






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