彼と私の数日間 | ナノ
彼の話はいつも理解不能で


ライモンシティはよく来る街だった。

ミュージカルにリトルコート、ビッグスタジアム、それに観覧車と楽しめる施設が多い。

最近はポケモンの強化でリトルコートとビッグスタジアムばかり行っていたけれど。

「よしミジュマル、観覧車乗ろうか」

Nとバトルした後、彼と乗った観覧車。

行ってみれば前には人がいて、どうやら二人でないと乗れないらしい。

そして、その人とバトルをして勝ったら乗ろうと言われた。

「いいよ」

ミジュマルを観覧車に乗せたいだけじゃない。私がまたあの観覧車に乗りたかった。

バトルは、いい勝負だったけれど何とか私が勝って、観覧車に乗ることに。

「(アマガサとか、リルとか使ってたら簡単に勝ってたのかな…)」

正直レベル差がどのくらいあるのか分からなくて、今いる手持ちのダブランを出した。

ミジュマルはまだレベルが低いし、心の奥底でどうしても乗りたかったんだと思う。

一緒に乗る人がやけにガクブルとして落ち着きが無い。

「(怖いのかな…)」

顔を真っ青にしていた。

「(これはまずい…)」

初めての観覧車にミジュマルは興奮していて外を見ていた。

私は一緒に乗っている人が心配で思わず立ち上がる。

それにグラッ、と揺れた。

「うわああぁぁぁ!!!」

途端に彼は大きな声を出す。

「ゆ、揺らさないでくれ…!」

「(怖いんだ…)」

ゆっくり動く観覧車は、彼にとっては生き地獄だろう。

なんて考えながらとりあえず大人しくするヒサギ。

「(なんで自分に勝ったら乗る、みたいなこと言ったんだろ…)」

不思議に思いながら、観覧車のスピードは変わることなく、ゆっくりゆっくりと地上に戻ってきた。


「変な人だったね…」

抱いているミジュマルに話しかけると、うんうんといったような鳴き声が聞こえた。

しかしあの後、顔色の優れない彼から聞いた話に、自分の胸が苦しくなった。

「(またNがいたって…観覧車に乗ることなく、じっと見つめていた…か)」

彼は「緑色の長い髪の毛の男が観覧車に乗ること無くじっと見つめていた」と言った。

どう考えても、Nにしか思えない。

本当に、何をしているんだろう。

「こっち行くと迷いの森で、こっち行くと跳ね橋だね」

どっちから行っても最終的にはソウリュウシティに着くのだけれど。

「やっぱり、最初に旅した町を順番に行こう」

そう言って跳ね橋の方へと進んでいった。

ゲートを通って、大きな跳ね橋を渡る。

「たまにね、コアルヒーって言うポケモンとぶつかることがあるんだよ」

笑いながら話すと、足元に自分のではない影がちらついた。

空を見上げてみると、一つの羽が降ってくる。

「おっ…と」

タイミングを合わせて降ってくる羽を落とすこと無く手に取ると、それは綺麗な羽だった。

「…もし、この先に、Nに会えたら…あげようかな」

何となく次に、Nの話を聞くのは、電気石の洞穴のような気がする。

そこは私とNが何度目かの戦いをした場で、彼の全身から溢れるトモダチへのラブを聞かされた場所だから。

「あの時は…変な人って思ってたな…プラズマ団なのに」

ホドモエシティでモーモーミルクを買ってから電気石の洞穴へと向かった。


彼の話はいつも理解不能で

(でもそれが何だかおかしく思えてきて)


2011.10.26

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