彼と私の数日間 | ナノ
知らない事実に戸惑って


そらをとぶを使えば一瞬にしてチャンピオンロードの頂点まで行けるだろう。

けれど心の整理と、ポケモンを鍛える為に1番道路から歩いて向かう。

パートナーのポケモンを貰って歩いた道、あの時は確かに新鮮で、見える景色全てが輝いて見えた。

旅を進めるうちに、プラズマ団との戦い、Nとの戦いを何度もしてきて、最後のジムに挑戦する頃には景色を見る余裕なんて無かった。

今度はゆっくり、ゆっくりと、焦らずに一歩ずつ進んでいく。

見える景色はあの時と違うけど、じっくり見ていけば気付かなかった所が沢山見つかった。

「でも、やっぱ疲れる…」

移動の殆どをそらをとぶで行っていた為に、少しだけ体力が落ちたように思える。

あの時は行く先々でNや、チェレンやベルと言った知り合いに会って、まるで一緒に旅をしているようだったけれど。

今は確かに自分一人で旅をしていて、少し寂しいと思えてきた。

「そうだ、ポケモンを出そう」

それなら寂しくない。

そう思い、もうすぐシッポウシティに着くところで、この間タマゴから孵ったミジュマルを出した。

この旅の間に、少しずつバトルや外の世界に慣れてくれればと言う考えから、今は別のポケモンを手持ちにしている。

「何か懐かしいなー…シッポウシティに来てから、アマガサがフタチマルに進化したんだよね」

ジムで、博物館でもある建物の前でしみじみと呟いた。

「そしてここで…2回目のバトルをNとしたんだよね…」

「Nってあの、緑頭の坊やのことかい?」

後ろから声がして振り返ると、そこにはシッポウジムリーダーのアロエが立っていた。

「アロエさん!」

「あの子なら、この間この博物館をここで眺めていたよ」

「えっ!? それって本当にNだったんですか!?」

「あぁ、確かにその坊やだった」

また私の知らないところで、Nが出没している。

この間はカラクサタウン、今度はシッポウシティ。

一体Nは何をしてるのか、何をしたいのか。

「はっ…ダメダメ…」

今はアデクさんを倒す為の旅なんだから、余計なことは考えちゃダメ。

「また旅でもしてるのかい?」

「はい! チャンピオンに挑戦しようと思って」

「そうかい、そうかい。頑張るんだよ」

アロエさんの笑顔に、少し心が温かくなった。


◆◇◆◇◆◇◆


順調に旅を進めていくと、自分の知らなかったことに色々気付いた。

ヤグルマの森では、ヤナップとヒヤップが野生で初めて出てきたし、スカイアローブリッジは季節によって見える景色が全然違う。

ヒウンシティは前に来たよりも人が多く感じた。

結局チェレンに未だ奢って貰ってないヒウンアイスを買って食べながら、4番道路に行くゲートの前に立ち止まった。

「ここでアイス食べきろう」

この先は砂嵐が起こっていて、アイスに砂がついてしまう。

「そう言えば、ここでアズキがマメパトからハトーボーに進化したんだっけ」

このヒウンシティで、踊っているトレーナーとバトルした時。

「全部の場所に、沢山の思い出があるんだよ」

連れているミジュマルにそう呟いた。

大分外の景色に慣れたのか、嬉しそうな顔をしている。

ヒウンアイスを食べ終わったヒサギはゲートに入り、4番道路を進んでいった。


知らない事実に戸惑って

(目的を見失いそう)


2011.10.26

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