彼と私の数日間 | ナノ
心機一転と理由をつけて


「(物凄く今更なことだけど、私って片思いだったんだよね…)」

何故、彼が帰ってきたら連絡が来ると思っていたのだろう。

あれ、でも私、彼に無理矢理「絶対次がある、会いに来る約束して」みたいなこと言った気がする。

そんで約束させた気がする。

あぁ、もしかしてそのせいかな。連絡が来ると信じて疑わなかったのは。

「(私ってすごく、馬鹿……)」

自分の部屋で机に向かい、はあぁぁ…と盛大に溜息をついた。

「…消えたい」

そうしていると、モンスターボールから出していたポケモン達がこちらを凝視していることに気付いた。

「分かった。私にはもう、ポケモンしかいない」

Nがここに戻ってきているとして、私に何も連絡がないと言うことは。

約束なんて一方的にさせられたものとして見ていて、自分の好きなように行動しているだけなんだろう。

ならば私もそうするまでだ。

「そろそろポケモンも強くなってきたし、アデクさんに挑戦しよう」

そう言うと、部屋にいたポケモンは真剣な表情を浮かべて、コクンと頷いた。

ここイッシュ地方のポケモンリーグのチャンピオン。

ムンナのリム、レパルダスのリル、コジョンドのコウ、ケンホロウのアズキ、ゼブライカのデンリィ。

そしてパートナーのダイケンキ、アマガサを連れて、チャンピオンロードの先に、再び足を運ぶことを決意した。


◆◇◆◇◆◇◆


「と言うわけでお母さん、また旅に出るね」

翌日、今日旅に出ると母親に伝えた。

「そう…またしばらく帰って来ないのね」

少し寂しいような表情を浮かべるも、優しい笑みを浮かべて「分かった」と小さく呟いた。

「あなたがチャンピオンに勝てるよう、応援してるからね!」

「うん」

そこに、弟のショウマがやってきた。

自分より少し後に旅に出たが、Nと遭遇することが多かったらしい。

私たちが姉弟だと知ったNはひどく驚いた様子を見せていた。

「ショウマ、旅を終えたからってぐうたらしてたらダメよ?」

「んー…姉ちゃん、もしかしてまた旅に出るの?」

未だ寝間着姿のショウマはヒサギの姿を見て不思議に思う。

「そうだよ。そろそろアデクさんに挑戦しようと思ってね」

「アデクさんに!?」

チャンピオンのアデクのことをショウマも知っている。

いずれ自分も挑戦しようとしていた人間だった。

「じゃあ行ってきます!」

「あ、ヒサギお弁当!」

「あ、ありがとう! ママ!」

慌ただしく家を出て行った。

「姉ちゃん、焦ってるのかな…?」

「結構冷静だったけど?」

「ママが言うなら…」

出されたミルクティーを飲みながら、ショウマは自分もそろそろ…なんて考えているのだった。


心機一転と理由をつけて

(またカノコタウンから1番道路に出て旅をする)


2011.10.19

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