彼と私の数日間 | ナノ
過去を振り返るのはまだ早い


ネジ山を抜けて、セッカシティに着くと、ここでもNに会ったと気付く。

ヒサギは真っ直ぐとリュウラセンの塔にやってきていた。

この中で、Nはレシラムと共に飛び去って行った。

塔の壁は崩れたまま、中へと入る足場もそのままになっている。

「ねえ、どうしようか」

ここまで来ておいて、私は会いたくなった。

ここまで来ておいて、私はチャンピオンに挑戦するのが怖くなった。

リュウラセンの塔に入ることなく、その足場の前で立ち止まる。

ミジュマルがぽんぽん、と足を叩く。

まるで、「ヒサギ、大丈夫だよ」と言ってくれているかのように。

「…そう、だね」

自信満々な態度を示すミジュマルに、思わず笑った。

塔の入口から離れ、セッカシティに戻ってくる。

「ここでね、コウを、まだコジョフーだった頃に捕まえたんだよ」

初めて出会って、殆ど一目惚れかってくらいの勢いでゲットした。

「あとはクイズの家があったり…あぁそうだ、そこの水たまりの上で初めてマッギョを見た時は驚愕したよ」

今度は水たまりをよけながら歩く。

シリンダーブリッジの前に来ると、そこにはチェレンがいた。

「珍しい…こんなところでどうしたの?」

「ベルからヒサギはアデクさんに挑戦する旅に出たって聞いてね」

「あぁそうか。チェレンには話してなかったね」

ごめん、と言うとチェレンは気にしていないような笑みを浮かべた。

「実は、さっきNを見かけたんだ」

「私も電気石の洞穴で見かけたよ。その後見失ったけど」

「僕がここに着いた頃にNが橋を渡って行って、話しかけてはいないんだけど…」

彼は一体何をしてるんだろう?

とチェレンが疑問を口にした。

それはヒサギも感じている疑問で、未だに解決していない。

「はるか遠方で、Nらしき人物を見た…ねぇ」

やっぱり分からない。

そんな遠方にいたとして、なぜ今ここに戻ってきたのか。

「ヒサギ、チャンピオンへの挑戦、頑張れ!」

「うん。ありがとう」

とりあえず今は、目の前の目的を成し遂げたい。

幼馴染から送られたエールで、元気を少し取り戻したような気がした。


◆◇◆◇◆◇◆


ソウリュウシティは、初めて来た時にゲーチスが演説をしていた。

それに心が揺れる住民たちを見て、私は余裕を完全に失った。

最後のジムなだけあって、ソウリュウジムはジムトレーナーでさえも強くて。

本当に勝てるのか不安で、でも勝てないとチャンピオンロードに行けなくて。

「何度もポケモンの確認をしたなぁ」

そして勝った時、今までのジム戦も、トレーナーとの戦いも全部、無駄じゃなかったと確信した。

私は間違ってないと、これでNと戦うんだと。

あの時は自信でいっぱいだったのに、今はチャンピオンがもうすぐそこにいるような感覚で、緊張している。

リュウラセンの塔の時のような不安。

また心配そうな顔をするミジュマルに笑って見せて、ここからはそらをとぶでチャンピオンロードの頂点まで飛んで行った。

そこのポケモンセンターでポケモンを入れ替えて、道具の確認をして、いざ四天王の部屋へと進む。


過去を振り返るのはまだ早い

(せめてこのバトルが終わってから全てを)


2011.11.05

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