おにごっこ | ナノ
否定し続ける

アオイが去った頃合いに、ファントムに伝言を伝えると、さらにペタに伝えてくれと伝言を頼まれた。

この人は仕事を放棄する癖があるから困る。

しかし、その伝言を届けようとペタの部屋へと向かっている私も私だ。

「ペタ、ファントムからの伝言があ…る…」

ノックをして、そう言いながら部屋へと入ると、どこか不機嫌なペタの姿がそこにあった。

一度見渡せばそこに、いつもいるアオイの姿は無かった。

「どうしたの…? 眉間に皺なんて寄せちゃって」

「あぁ…少し不愉快なことがあっただけだ」

「はあ…あ、アオイが他の男と仲良くしてた、とか? …なんてね」

そんなことあるわけないか、と冗談のつもりで言ったのに、ペタは酷く驚いた様子でこちらを見ていた。

「……え、まじで?」

「いや…そんなはずは……ましてやあんな小娘などに…」

「姉として私も複雑だわ。自分よりも年上の男を妹が好きになった時点で複雑だって言うのに」

「この私が…あんな小娘を気にしている…だと…?」

アザミの話は聞こえていないのか、頭をかかえて悩むペタ。

そんな姿に、アザミはほんの少しだけ自分と重ねた。

「(…もしかしたら、私もファントムが気になっているのかな…)」

認めたくはないけれど、どうにも胸の中がスッキリしない。

それは多分、ファントムが私以外の女と話していたからだ。しかも楽しく。

笑顔だって浮かべていたし、目だって、ただの人間を見る目では無かった。

「ねえペタ、私たちってさ、もしかしたら素直じゃないのかもしれないね」

「は……?」

ペタも、今だって散々否定している。

自分の気持ちを認めようとしていないのだ。

それは、最近の私と同じ。

私も、散々否定した。否定し続けた。今だってそう思ってる。

そう、思い込もうとしている。

「私とお前を一緒にするな」

「そうね。ペタは変なところで素直と言うか、自分の感情に正直よね」

「しかしまぁ…言ってることは合っているかもしれないな」

「ペタだって、胸の中がスッキリしないでしょう?」

私がそう言ったら、少し訝しげにこちらを見た。

「別に、心を見透かしているわけじゃないのよ」



否定し続ける追いかけっこ


2011.12.17

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