邪魔される
今日も今日とてファントムへの用事を済ませたペタを追いかけている。
途中で追いつけば告白をして、それにペタが逃げ出してまた距離が出来るの繰り返し。
それでも自分はそれが楽しかった。
距離が出来る、とは良いことではないかもしれないが、まだ付き合っている関係ではない自分としては、その距離はいつだって縮められるのだ。
いつまでも彼を追いかけることが出来る。
そしてまた彼を追いかけていると、目の前に三人の女が立ち塞がった。
「………」
足を止めて、女を見ると、女はやけに不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「あんた、また彼を追いかけていたでしょ」
「……それが?」
「いい加減にしなさいよ! 迷惑なのよ!」
「別に、あなた達に迷惑をかけた覚えはありませんが」
確かに、廊下を走りながらペタの名前を呼んで愛を叫ぶのは非常にうるさかったと思う。
だけどそんなこと、もう慣れたと言う人物が周りに多かった。
「うるさかったなら、ごめんなさいね」
そう言ったら、三人のうちの一人が大きな声をあげた。
「そうじゃないわよ! いや、それもあるけど!」
「どっちよ」
めんどくさいな…と思いながら、女の言葉を待った。
「いい加減ペタのこと諦めなさいよ!」
「ふーん」
彼女もどうやらペタが好きなようだ。想像していたけれど。
「あんた邪魔なのよ。目障りなの。だから、消えてくんない?」
ニヤリ、と笑う女はARMを発動した。
大人の余裕、と言うことなのか、アオイの方もARMを発動するのを待つ。
「私もARM、発動していいの?」
「私は大人ですから。そのくらい許してあげるわよ。どうせあんた死ぬことになるんだし」
「そう…後悔しないでね」
なんで私がペタの手伝いをしているか、なんて雑魚は知らない。
「ウェポンARM、ホワイトランス」
指につけたリングから、ウェポンARMを発動する。
長い棒状のものの先端に、ダイヤの形に近い刃物がついており、それはとても白くて、暗い廊下にはやけに映えた。
女は余裕からか、アオイに先制を許す。しかしそれが間違いだった。
遠慮なく先制攻撃をするアオイは、ペタを追いかける時よりも早いスピードで女を切りかかる。
一瞬にして余裕だった女の顔は驚きに変わり、そして声も出せずに体が上下に真っ二つとなった。それに少し遅れて血飛沫が舞う。
「私、やり過ぎちゃうところがあるみたいなの。だから手伝いしてるんだ」
後ろにいた他の女はそんな様子に恐怖し、冷や汗をかいてガタガタと震える。
アオイはホワイトランスをブンッ、と一振りして付着した血を落とし、ARMに戻した。
◆◇◆◇◆◇◆
「(…来ないな)」
いつもならもう来てもいい時間に、彼女は未だ来ていなかった。
最近では好きだと言ってくるのが少なくなったが、代わりにくだらない話が多くなった。
しかし今日は、そんなくだらない話を一度も聞いていない。
先程追いかけられたものの、途中から彼女の気配は無くなった。
「ごめん、遅くなっちゃった」
そう言いながらドアを開けて入って来る。
「ファントムのところに寄ってて…」
「(ファントムの、ところだと…?)」
少しイラッ…と感じたペタは、いつもよりキツイ言葉をアオイに向ける。
「遅れるとはだらしない…しかもファントムのところだと? ファントムに迷惑だろう」
「ご、ごめんなさい…」
「(しまった…少し言い過ぎたか…)」
なぜこんなにも、イライラするのだろう。
邪魔される追いかけっこ残酷シーン? グロテスク? かどうかは分かりませんが、注意書きの部分はこの話なんですが。
まぁ、ぬるいと言うか、注意するほどのことか? と思ったんですけどね…。
2011.12.15
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