おにごっこ | ナノ
引きこもりな

「んんー……」

朝、目が覚めるも未だ布団の中に潜り、ごろごろとベッドの上を転がる。

「…起きたくないなぁ」

この間、ペタに声をかけてもらえなかったことが相当ショックだったのか、アオイは浮かない顔をしていた。

「(やっぱり…鬱陶しかったんだろうか…)」

あの感じは、確実に避けられていた。

そう思い込んでしまったら、それ以外の考えは浮かんでこない。

「(いいや…今日は引きこもっちゃおう……)」

それで解決するわけではないけれど、どうにも体が思うように動いてくれなくて、布団から少し頭を出して再び眠ろうとした。

するとそこに、トントンとドアをノックする音が聞こえる。

「アオイ? 今日は起きるのが遅いですね。どこか具合でも悪いんですか?」

「(ロラン…?)」

その声は、ロランだった。

彼はナイトクラスでアオイはビショップだが、アオイがここに入った時から仲が良い。

どうやら、この時間になっても廊下を走る姿が無いアオイのことが気になったらしい。

「(ロランには申し訳ないけれど、今回ばかりは返事をする気になれないなぁ…)」

暫くして静かになったから、やっと諦めたんだと思ったら、今度はさっきよりも大きくドアをノックされた。

「アオイー? あんたが寝坊なんて珍しいじゃない。さっさと起きなさいな」

その声は自分の姉のものだった。

きっとロランが呼んできたのだろう。

「(…原因はあんたにもあるんだよ……)」

姉の声を無視して、眠ろうとする。

しかし暫くすると、さらにトントンとドアをノックされた。

また姉かと思うと、今度は違った声が聞こえる。

「アオイ、僕自ら来てあげたんだから起きなよ」

「……ファントム」

ドアの前にいる人物には、届かないくらいの小さな声で名前を呟いた。

「起きないの? だったら無理矢理にでも開けさせるよ」

それから数分、時間が経つと更に大きく、ドンドンッとノックされた。

否、これは最早ノックの域ではない。叩いている。出てこいと音で物語っている。

「起きろ!! 馬鹿者が!」

その声は自分が愛しいと思っている声で、その人物は私が悩んでいる張本人だった。

「何が原因だ! 言ってみろ! さもなければドアを壊す」

「それは困るっ!」

ドアを開けはしなかったが、大人しく話し始めた。

ペタがどれ程自分を鬱陶しく思っているのか、どうして避けられたのか、このまま好きでいていいのか。

そう言うと、大きな溜息が聞こえた。

「ずっと執拗に好きだ好きだと言われるのは、正直鬱陶しい…が、お前がいじけている方がもっと鬱陶しい」

きっぱり言われてしまった。

「それを程々にするなら構わん。それより周りに迷惑をかけていると気付け、馬鹿者」

あぁ、どうしてこうも、彼は私に優しいの。

これが優しいなんて思ってるのは、きっと私くらいなんだろうけれど。

「…ペタ、ごめんなさい…それに、おはよう」

ゆっくりとドアを明けて、呆れ顔のペタと顔を合わせる。

「ペタ、大好きよ」

「程々にしろ、と言っただろう」

「今日はこれが一回目よ」



引きこもりな追いかけっこ


2011.12.11

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