日常的な
「ちょっとペタ…! 待ってよ…!」
「お前に付き合ってられる程暇じゃないんだ。さっさと自分の仕事に戻れ」
「私の仕事はペタの手伝いでしょ! それ以外の仕事なんて無いんだけど!」
広い廊下を走っていく。
「ペタが走ってるなんて珍しいな」
「普段なら遠くにいるペタに近付こうとアオイが走ってるだけなのにな」
「いい加減鬱陶しいんじゃないか?」
などと、ペタを見かけた他のナイトは話す。
「て言うかっ…私がっ…ペタ好きって言った瞬間にっ…逃げるってっ…どういうことなのっ!?」
「どういうことも何も、そのままの意味だ」
ペタは執務室に辿り着いて、中に入ると勢いよく扉を閉めた。
「アオイの、ペタへのアタックも見慣れたなぁ」
そう呑気にする他のナイト達は、執務室の扉をドンドン叩くアオイの姿を横目で見るのだった。
◆◇◆◇◆◇◆
「ねえアザミ、待ってよ」
「待つわけないでしょっ!!」
「あれかな? 私を捕まえてごらんなさーい、って展開かな?」
「誰がそんなこと言った!?」
広い廊下を走っていく一人の女を、ゆっくりと追いかけるのはナイトで最も強いと言われる人物だった。
まるで余裕だと言うように、笑みを浮かべて女に迫る。
「ファントム…もう追ってこないでよ!」
「それは無理かなぁ。だって僕、アザミのこと好きなんだ」
そう口にした途端、目の前の女以外には見せたこと無いだろうと思わせる程の笑みを浮かべた。
そんな笑みに、ゾクッ…と肩を震わせる。
「私は…あんたなんか嫌いよっ…!」
涙目になりながら、そう叫ぶと全力疾走で逃げて行った。
「逆効果だったかな…」
しかしファントムは諦めずに女が逃げた方を歩いていく。
慌てずに、ゆっくりと、徐々に距離を縮めていくのだ。
日常的な追いかけっこ2011.12.07
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