逆転する
ファントムとアオイが付き合っている、だとか、アオイがファントムに告白した、なんて噂がたっている。
そんなことにどこかモヤモヤして、思わずペタの部屋へとやってきていた。
「最近ファントムと会えてなかったの」
「そう言えば、最近アオイもここにあまり来てないな」
その理由は、アオイとファントムが二人で企んだ作戦のせいだった。
その名も押してもダメなら引いてみろ作戦。
名前の通りで、他に特に何も決めていない単純な作戦だった。
いつも追いかけてばかりだった為に、たまには引いてみると言うことだ。
「どうしよう…私…妹に嫉妬してるかも…」
「フッ…修行が足りないんじゃないのか。私は例えファントムとアオイが付き合おうとも……」
「付き合おうとも…?」
「別に、決して、ファントムに殺意が沸くなんてこと…」
「落ち着いて、ペタ」
椅子に座り、仕事をしていたペタはカタカタと震えて、怒りを抑えきれていなかった。
「…私、ファントムのこと…好きなのかなぁ…」
「なにを今更な」
「…なにそれ」
「見ていれば、お前の拒否が本気でないことくらい分かる」
「……だったら、妹の気持ちも本気だって分かってあげてよ」
「それも分かっているさ」
◆◇◆◇◆◇◆
押してもダメなら引いてみろ作戦を決行中のアオイは、廊下を大人しく歩いていると、突然ペタに呼び止められる。
「???」
普段なら呼び止めるどころか、無視をして別のルートで執務室に向かうと言うのに。
「(珍しい……これはもしかして作戦の効果有りかな…?)」
「最近手伝いに来ないな。おかげで仕事が溜まる。サボるのはいい加減にしろ」
「(どうしよう…すごく嬉しい…!)」
同時刻、ファントムは部屋で退屈そうにしていると、珍しくアザミの方から部屋にやってきた。
そう言う時はディアナからの伝言が大半なのだが、今回はどうやら違う様子。
少しソワソワした様子で、こちらをチラチラと見ながら何かを言いたげにしていた。
「こ、この間ペタが、しっかり仕事してって言ってたわよ…」
何気ない話をし始めたことに、ファントムは思わず驚いてしまった。
「(これって……)」
まるでシンクロしているかのように、ファントムとアオイは同じように口角を上げる。
そして、口を開いた。
「「鬼の、交代だね」」
逆転する鬼ごっこ(追い続けて)(身を引いて)(気になって)(追いかける)
end
2011.12.23
:
back :