少女は真実を告げる
「私のお母さんは、異世界人なの」
少女の告白に、ペタは目を見開いた。
その場にいた者は言葉を失う。
そして少女は、笑みを浮かべた。
◆◇◆◇◆◇◆
それは少し前に遡る。
地底湖から帰ってきたアオイは、廊下でロコと出会う。
「アオイ、これを持ってくれませんか?」
「重そうな荷物ね。これは確かにロコじゃ無理かも」
「普通、16歳の女の子ならみんな無理だと返すと思いますが」
アオイは軽々とその荷物を抱えて持った。
荷物は一つや二つではない。
同じくらいの荷物がもう二つ、合計三つあるのに、同時に二つを持ち上げた。
「本当、あなたのその怪力に驚きますよ」
「はは…鍛えてるからだよ」
それだけじゃないことを、アオイは自分で分かっていた。
「実は異世界の人間、なんてことありませんよね?」
「…冗談でもそれは言っちゃいけないなぁ」
三つの荷物を持ちながら歩いていく。
「はい、っと。ここでいい?」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ私はファントムに用があるから、またね」
「アオイ」
ロコはアオイを引き留める。
「異世界の人間、ダンナやあのギンタとか言う少年以外にも、いると思いますか?」
「…ギンタやダンナがここに来たARMの数だけ異世界の人間がここに来る可能性がある」
「………」
「でも、ギンタもダンナもある意味特別なんじゃないの?」
ヒラヒラと手を振ってロコに背を向けた。
「アオイは実はカルデアの人間で、あの腕力は実は魔力で」
「いやいや。魔力じゃあれは無理だよ。実は異世界の人間だったりして」
ファントムの声にピタリと動きを止めるアオイ。
「ファントム、ふざけるのも大概にしてください」
「ペタさんはどう思うんですか?」
「そうだよ。ペタの意見も聞きたいな」
ファントムの部屋で、3人の男が談話中。
「さあ…ただの腕力向上型ARMでも使ってるんじゃないんですか」
「そんな詐欺紛いなことしないわよ」
ペタの言葉のすぐ後に、アオイは言葉を発した。
三人はアオイの存在に驚く。
「じゃあアオイのあの腕力や身体能力は何なんですか?」
「………」
今いる男の中では一番若い、ロランがアオイに問うた。
年下のアオイに対しても敬語が抜けない。
ロランの質問に対し、アオイはファントムを少しだけ睨んだ。
「私の体の中に流れる血に、異世界人の血が流れているとしたら、どうする?」
「やっぱり異世界人なんですか!?」
アオイは首を横に振る。
「メルヘヴンの男と、異世界の女の子供って、この世に存在すると思う?」
「あ、あの…さっきからどうして質問で返して…」
「私のお母さん、異世界人なの」
ペタを目を見開いた。
その場にいたファントムとロランは言葉を失う。
そしてアオイは、笑みを浮かべた。
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