特等席 | ナノ
好きな人、友達未満

グリーンくんのイーブイも出てきて、ピカチュウとイーブイはじゃれあってる。

私たちはレッドくんのお母さんが出してくれたお茶とお菓子をつまみつつテスト勉強をしていた。

「それで、これはこの答え」

「ありがとう! レッドくん!」

やっぱりレッドくんの教え方は上手で、私にも優しく教えてくれる。

答えが分かったところで、近くにレッドくんがいることに気付いて心臓が跳ね上がった。

意識しだすと意識せずにいられなくて、ちょっとだけ距離を作る。

本当は近くにいたいのに、気持ちと行動が裏腹になって、自分が分からなくなった。

勉強に集中できない。

「俺、ちょっとトイレ行ってくる」

「帰ってこなくていいよ」

「残念だけど終わったら帰ってくるわ」

グリーンくんが席を立ったところで、少し休憩になった。

ホッと息をついて、お茶を一口飲んだ。

「私も、ポケモン連れて来ればよかったかな」

「どうして連れて来なかったの?」

「みんなお昼寝してたから」

「へぇ」

会話が終わってしまった。

もっと話したいって思うのに、何を話したらいいのか分からない。

もっと人と交流しておけば、こんなことにはならなかったのだろうか。

「好きなのかな…」

ふと思った。

胸がドキドキするのも、顔が熱くなるのも、もっと話していたいって思うのも。

全部全部、私がレッドくんを好きだからかな。

そうじゃないかなって思ってはいたけれど、自覚したら何だかまた顔が熱くなって、でも嬉しくも思った。

「…………」

「??」

私が色々考えていたら、レッドくんがじぃっとこちらを見ている。

ただ見ているだけじゃなくて、どこか驚いた様子で見ていた。

「レッドくん?」

「…リコリス…今…」

「へ……?」

"好きって言ったよね…?"

そうレッドくんが小さく呟くのと、グリーンくんがトイレから帰ってくるのはほぼ同時だった。

だけどレッドくんの言葉は、私の耳にしっかりと届いていて、自分が思ってることを口走っていたことに気付く。

そして私はまた、顔が熱くなった。


「(あれ、何この空気……)」

「………」

「…………」

黙り込む私とレッドくん。

と言うか、私が黙ってしまったからレッドくんも黙ってしまったのだけど。

ドアの近くで立ち尽くすグリーンくんが可哀想、とかどうでもいいことを考えて気を紛らすも、やっぱり今は目の前のレッドくんが気になって仕方ない。

私は自覚したばかりだし、私がレッドくんを好きなことをちゃんとレッドくんが理解したかもわからない。

「……好き、なのかなって」

こういう時、どうすればいいのかも分からない。

誤魔化すの? 素直に言うの? それとももっと他にできることがあるの?

なんて考えて、私は素直に言ってしまった。

誤魔化すのは嫌い。

他にできることがあっても、それを私は知らない。

「私、レッドくんのこと好き、なのかもしれない」

あぁ、まだお友達にもなってないのにな。


好きな人、友達


2011.09.04

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