特等席 | ナノ
遊びの約束しました

春のにおいの風が、夏のにおいの風に変わった。

肌にまとわりつく暑さと汗に下敷きをパタパタとうちわ代わりに扇ぐ。

「こう毎日毎日暑いと何もする気になんねーな…」

「それでもグリーンくんは仕事たくさんあって忙しそうだよね」

「俺、次の生徒会では会長するつもりだし」

「優等生だぁ」

「よせよ。照れるだろ」

「照れることないよ。褒めてないもん。皮肉だもん」

「リコリス、今度うちのイーブイのとっしん受けてくれないか」

パタパタパタ…どんなに扇いでも暑さは無くならない。

首から流れる汗をタオルで拭う。

「あぁ、そうだ」

ふと、机に突っ伏していたグリーンくんが起き上がる。

「おーい! レッドー!」

前の席に座っているレッドくんの名前を呼んだ。

するとレッドくんはいつもの無表情で振り返って、手招きをするグリーンくんに近寄ってくる。

「今度さぁ、俺のイーブイとレッドのピカチュウをリコリスに見せようって話してたんだよ。な!」

「…そう言えば、そんなこと話してたね」

レッドくんは相も変わらず無表情でそう言う。

「確か前聞いた時、俺らの家とリコリスの家、近かっただろ?」

「(前に勉強会した時、殆ど帰り道一緒だったっけ…)」

未だパタパタと下敷きで風を作る。

「俺ん家、今度の日曜は姉さんしかいないから来いよ」

「よかった。お姉さんがいるなら安心した」

「別に誰もいなくてもリコリスには何もしないから安心しろ」

「グリーンくんって小学生の時、好きな女子をからかうタイプだったでしょ?」

「はぁ!?」

「リコリスすごいね。当たってる」

「レッドも余計なこと言うなよ!」

グリーンくんの顔が少し赤くなってる。

あ、耳まで赤くなってる。

「僕の家も、母さんがいるけど来てもいいよ」

「!!」

レッドくんのお家。

ぜひ行ってみたいけれど、目的はピカチュウとイーブイを見ること。

期待するようなことは無いし、ましてや今心臓がドキドキしてどうするの。

「リコリス?」

視線を下に向けた私を、レッドくんは覗き込んだ。

「!!!」

この暑さ、思わず下敷きで扇ぐのも忘れて、顔を真っ赤にした。

「じゃあレッドん家にするかー」

「あ、グリーンはイーブイ連れてくるだけでいいからね。イーブイは僕が責任もって返すから」

「え、俺はレッドの家に入れないの? 出禁になった覚えないんだけど!」

「イーブイ…もふもふ…」

「お前イーブイが目当てかー!!」


遊びの約束しした

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