特等席 | ナノ
ファミレスで勉強会

「今、何て言った?」

「え…だから"きょうない"って読んだの」

「これ、"けいだい"って読むんだよ」

静かに、正解を口にしたレッドくん。

間違えた私を見るグリーンくん。

そして、読み方を間違えた私。

「へぇ! これけいだいって読むんだー」

「いやいや! 何で境内が読めないんだ? いや気持ちは分かる。俺も結構前に間違えたことあるけど!」

「だって境内なんて言わないもん」

「確かに日常会話で境内は使わないけどさ!」

「グリーン、うるさい」

今、私たちはファミレスに来ている。

もうすぐテストがある為に、3人でテスト勉強をしようと言うことになった。

こういう勉強会なるものに来たことが無かったから、よく分からなかったけれど。

ドリンクバーで持ってきた飲み物を飲みながら、ノートと教科書を広げている。

ファミレスとは食事をする場ではなかっただろうか。

「もうちょっとしたら昼飯にしようぜ」

「もう12時過ぎたんだね」

一人で勉強するよりも楽しいし、思ったよりも捗っている気がする。

「リコリス、そこ間違ってる」

「え、どこ?」

「ここ」

レッドくんが私のノートに触れる。

前と違って、随分と近くにいることに改めて気付いてドキッとした。

「あれ、違うの?」

「うん」

自然を装うのが、少し苦しくなってくる。

「で、ここがこうなる」

「わぁ、ありがとう!」

レッドくんの丁寧な教え方で、私にも本当に解りやすい。

切りのいいところで、それぞれお昼を注文する。

男子とこうやって遊ぶことが無かったから、食べる量に驚いた。

「そんなに食べるの?」

「普通だろ?」

グリーンくんの言葉にレッドくんが静かに頷く。

「むしろリコリス、少なくね?」

「え、そんなことないよ?」

私はオムライスとミニサラダ。

グリーンくんはパスタに小さいピザ。

レッドくんはハンバーグセットに、デザートにカスタードパイ。

「帰りにコンビニ寄っていこうぜ」

「うん」

「え…? まだ食べるの?」

「帰る頃には腹減るだろ?」

グリーンくんの言葉に、またレッドくんは静かに頷いた。


◆◇◆◇◆◇◆


陽が暮れ始めて、空は一気にオレンジ色に染まる。

コンビニで購入したアイスを食べながら歩くグリーンくんとレッドくんと私。

「結局リコリスも買ってんじゃねえか」

「だって暑いんだもん」

「もうすっかり夏だな」

「ついこの間まで、春だったのに」

ついこの間まで、桜が舞っていたような気がするのに。

「リコリス、アイス垂れてる」

「えっ…」

レッドくんに言われて気付いた。

溶けだしたアイスが自分の人差し指を伝う。

アイスを違う方の手で持ち直して、溶けた部分を舐めていると、アイスが垂れた手の腕を掴かまれ引き寄せられる。

ぺろ、と指に垂れたアイスを舐められた。

「!! れ、レッドくん…!?」

「もったいない」

「(これが素だって言うから質悪いよなぁ…)」

グリーンくんがそんな風に思っているなんて知らずに、みるみるうちに顔が赤くなっていく。

「早く食べないと、また溶けるよ」

冷めない頬の熱と、暑さによって溶けるアイス。

急いで食べたら、頭がキーン、とした。


ファミレで勉強会

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