楽しげな風景
「悪いな…手伝わしちまって」
「ううん。私も職員室に用があったから全然気にしないで」
生徒会役員のグリーンくんはいつも忙しそうだった。
でも、休み時間は必ずレッドくんと話をしているし、他のクラスメイトとも仲良くしている姿を見る。
集めたノートを職員室に持っていくらしく、ほんの少しだけお手伝いをした。
グリーンくんは「女子に手伝わすのは気が引ける」と言って最初は断っていたけれど、私が無理に手伝ってしまったのだけど。
「グリーンくんは、家に他のポケモンとかいるの?」
「ウインディとかいるぜ」
「いいなぁ」
「リコリスはポケモンいないのか?」
「いるよ。水タイプばっかりなんだけどね。ウインディみたいなふさふさなポケモンがもっと欲しいなぁ」
「水タイプにふさふさはいねえもんな…」
「でも他にもポケモンいるよ。キュウコンとか、メリープとか、ラフレシアとか」
「意外とふさふさって言うかもふもふなポケモンいるじゃねえか」
話していれば、あっという間に職員室に着いた。
◆◇◆◇◆◇◆
自分の席に座って、授業が始まるまでぼーっとしていたら教室の外が急に騒がしくなった。
見てみれば、教室の戸の近くには、自分たちよりも少しだけ背の低い男の子が立っていた。
戸の近くにいた女子生徒が口を開く。
「レッドくん、中等部の子が来てるよー!」
どうやらレッドくんの知り合いらしい。
「(レッドくん、グリーンくんの他に友達いたんだ…)」
様子を見ていると、男の子だけじゃなく女の子もいた。
可愛らしい女の子に、胸が痛むのが分かった。
レッドくんがその女の子の頭をぽん、と優しく触れていたのを見て、思わず目を逸らす。
「(…親しい友達だと、あぁいうこともするのかな)」
分からない自分を悔しく思う。
グリーンくんが戻ってきたところで、男の子と女の子はレッドくん達に手を振って去って行った。
気付けばもうすぐで予鈴が鳴る。
急いで教科書を出すと、丁度よく席に戻ってきたグリーンくんが言葉を発した。
「次、数学だけど」
「あ……」
私が出していたのは現代文の教科書だった。
「どうしたんだよ?」
慌てて教科書を入れ替える。
「何でもないよ?」
「そうか?」
「うん」
グリーンくんと目を合わせられず、前を向いたらレッドくんがちら、とこちらを見ていた。
楽しげな風景
:
back :