特等席 | ナノ
授業中の手紙

ある日の授業中、ノートをとっていたらひょこ、と折りたたまれた紙が飛んできた。

チラ、と隣を見ていると、グリーンくんもこちらを見ている。

特に誰かに渡してほしいわけじゃ無いみたいだから、その紙を広げた。

"最近よくレッドのこと見てるだろ?"

そう書かれた文字に、胸がドキッと跳ね上がる。

「(気付かれてた……)」

そう言えば、いつもグリーンくんはレッドくんの前に立っているから私のこと見えるのか。

「(返事、なんて書こう…)」

授業中に手紙のやりとりなんてしたこと無い。

どうやって書いたらいいのかも分からない。

新しい紙を用意するの?

それともこのまま書いてしまっていいの?

いっそ口答の方がいいのでは?

そもそも、何て言うの?

「(グリーンくんがこっちチラチラ見てる…返事欲しいのかな…)」

何て書けばいいの。

まともにノートもとれないまま、授業が終わってしまった。


「おい、何で返事くれねーの?」

「え……」

休み時間、グリーンくんはどこに行くでも無く、隣に座ったままそう問うてきた。

「ごめんなさい…こういうことしたこと無いから、どうやって書けばいいか分からなくて…」

「どうやって…普通にここに返事書けばいいだろ」

トントン、と先程の手紙の空白部分を指でつついた。

「じゃあ…」

「今書かなくていいよ。とりあえず、この質問に答えてくれりゃあいいから」

筆箱のチャックを開けたところでそう言われ、再びチャックを閉めて口を開いた。

「グリーンくんとレッドくん、正反対なのに何でグリーンくんはレッドくんに話かけるのかな、って」

「それで見てたの?」

「…多分、それだけじゃないと思うけど」

でも、それが何なのか自分でも分からない。

「ふーん…(レッドのこと好きなのか?)」

「それで、グリーンくんとレッドくんはどうしていつもお喋りしているの?」

「俺とアイツ、幼馴染なんだよ。あいつ無愛想だけど良い奴なんだぜ」

「うん。知ってる」

優しい人だって、知ってる。

「知ってる?」

「前に、ピカチュウを拾ってるの見たことあるから」

雨の中にいたピカチュウを拾ってた。

「へぇ」

「グリーンくんも、良い人だよね」

「は…?」

「前にイーブイ拾ってるの見たことあるよ」

「マジでか。レッド以外知らないんだから誰にも言うなよ?」

「どうして?」

少し顔を赤くするグリーンくんが面白くて、思わず聞き返してしまった。

「…恥ずかしいからだよ」

「(恥ずかしがることなんて無いのに…)」

ふと前を見てみたら、レッドくんと目が合った。

こちらをじぃー、と見ている。

「とにかくさ、気になるんなら自分から話してみればいいだろ」

「え……だって私、レッドくんと話したこと無いし…」

「いいから」

腕をひかれて、机と机の間を歩いて、こちらを見ていたレッドくんの机まで連れて来られた。


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