特等席 | ナノ
夏のにおいと私の特等席

『でもね、レッドくん。付き合うにはまだ早いと思うの。私まだ全然レッドくんのこと知らないもの』

『僕もそう思う。全然リコリスのこと知らない…』

『お前ら変な奴だな』


そんなことを話して、私とレッドくんの関係は変わったのか変わってないのか分からない状態になった。

見事友達となった私とレッドくんとグリーンくんは、前と変わらずに一緒に勉強したりご飯食べたり、休み時間にお喋りをしたり。

それを見たクラスメイトに「変わったね。よく笑うようになったし」と言われた。

あぁ、私笑ってるんだ、って客観的に考えて、それをグリーンくんとレッドくんに言ったら呆れられたけど頭を撫でられた。

「席替えしまーす」

先生のその言葉に、もう私はレッドくんの後ろ姿を眺めることは出来ないんだと思って、寂しくなった。

隣だったグリーンくんとも離れてしまうんだと。

順にクジを引いていって、黒板に書かれた番号の席に一度座る。

自分の机と椅子を移動するのは全員の席が決まってから。

私の席は真ん中、窓際寄りの一番後ろだった。

「(一番後ろに縁があるのかな)」

幸い、斜め左前の席は比較的仲の良いクラスメイトだった。

「(何とかなるかな…)」

私の特等席だったところは別の女子が座っていた。

女子のクジ引きが終わると次に男子のクジ引き。

見ていたら、グリーンくんは私の左隣の列の後ろから3番目、レッドくんの席だったところに座った。

「(レッドくんはどこだろう…)」

少し教室内を見渡すと、レッドくんの姿が見えなかった。

「隣、よろしくね」

聞き慣れた声に、右を向く。

「レッドくん」

私の隣に座ったレッドくんは、少しだけ微笑んだ。

「隣なんだね」

「…そうみたい」

「あのね、今度からは後ろからじゃなくて、横からレッドくんのこと見てもいい?」

「………」

そう言ったらレッドくんは口を閉じた。

けれど少し頬を赤くしていたから、多分恥ずかしいんじゃないかと思う。

「…程々にするなら」

「うん」

多分この席も、私にとって特等席になるかもしれない。

そう思ったら、自分は思ったよりもこの学園生活を楽しんでいるみたいだ。

授業中の手紙のやりとりは、今度は私からやってもいいだろうか。


夏のにおいと私の特

end

2011.09.20

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