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「おはようございます!! 昨日はよく眠れましたか!?」
「あんまりー」
「一睡もしてねえよ、文句あるか」
「ずーっと女の子と遊んどった!」
自分の問いに眠れたと言う回答が出ないことに苛立ちを覚えつつも、ポズンはダイスを用意する。今回から彼がダイスを振り、ステージと人数を決めることになったのだ。
「イカサマしたら殺すぞ」
「や、やだなー。そんなことしませんよおー」
「アランさん、怖いです……」
ポズンは早速ダイスを振る。一度宙に投げ出されたそれは、重力に従って落ちていき、軽い音を立てて転がってから止まった。
「6VS6!! 砂漠ステージ!!」
ステージと人数が決まり、
「出でよ!! チェスの兵隊!!」
対戦相手であるチェスの兵隊が姿を現した。
「三人しかいねーじゃねぇかコノヤロー!!」
眠れなかったせいなのか、イライラするメルのキャプテン――ギンタはポズンにあたる。そこへ観客である男がギンタを呼んだかと思えば、子供達と遊ぶチェスの兵隊が一人。
「昨日の奴がまた子供達と遊んでいる」
彼の名前はアッシュ。先日、ギンタ達がカルデアから帰還した際に伝えたいことがあると言って子供達と遊びながら彼らを待っていた男だった。
「これで四人。あとは……」
そしてもう一人が現れる。
「キャンディス。五人目ね。もう一人は最後になったら出てくるそうよ」
アッシュが伝言を言い渡しにきたのも、まだ現れていない一人が理由だった。ナナシに縁のある人物らしいその人は、今回のバトルに絶対ナナシを出してほしいとアッシュに伝言を頼んだのだ。
「さて、そちらは、誰が出てくるのかしら?」
その言葉に、前に出ようとするドロシーの袖を引っ張って制するスノウは自分が行くと示す。
「まずはオレ!!」
ギンタが名乗り出て、続けてジャックが手を挙げ、口を閉じて目だけで示すアルヴィスと、その横でユーリは笑みを浮かべ、スノウは元気に主張した。
「そんでぇ。自分や。誰のリクエストか、ようわからへんがな」
とりあえずのメンバーが揃ったところで、ポズンは早速砂漠ステージに移動しようとする。が、観客がざわめき出したことで動きを止めた。彼らが見上げて指をさすその先には、禍々しい雰囲気を纏うファントムが立っており、ギンタ達を見下ろしていた。
「よくここまで来たね、君達。これからはもうルークも、半端なビショップも出さないよ」
ファントムが話し始めると、途端にユーリの体が強張る。このウォーゲームで何度か見た顔でも、彼女にとっては忌々しいそれでしかない。
「そこにいる三人は、ナイトに近い実力を持つビショップなんだ。その内二人は、最もナイトに近い三人のうちの二人!」
お菓子を食べる女の子と、帽子を被っている人物。そして、ローブを着てフードを目深に被った人物の三人だ。
「そしてナイトが三人! 全員ラプンツェルなんかより強いから頑張ってね」
満面の笑みを浮かべるファントムが、ユーリの目には不気味に映っていた。
「ファントム!!」
突如大きな声を出したのは、キャンディスと名乗る女だった。彼女は被っていた仮面を外し、嬉しそうな表情を浮かべて嬉しそうな声でファントムに話しかける。
「わ、私が勝つトコロを見ててね……! わ、私、頑張るからね!」
「うん。頑張ってね、キャンディス」
ファントムに応援されたことが余程嬉しかったのだろう。キャンディスは飛び跳ねて大喜びした。
「なんか今回もクセのある奴がいるねぇ……」
「うん。注意が必要だ!!」
漸くポズンがメンバーをステージに移動させる。アンダータを使ってやってきたその場所は、名前の通り全体が砂漠地帯だった。
「私ぃ、一番に出るからぁ」
移動してすぐに名乗りを上げたのは、先程までお菓子を食べていた女の子だった。彼女は早速ARMを発動したのか、空から大きな剣が降ってくる。
「魔剣ダンダルシア。世界で一番可愛いのって誰ぇ?」
「あなたです。マスター」
「じゃーあー。あそこにいるブサイク達と私、どっちがイケてるぅ?」
彼女が示すのは、スノウとユーリ。
「マスターに決まっております……あの女の子達はブスです!」
「私、一番に出るね。文句ないね?」
はっきりと言い切ったARMに、頭にきたスノウはプツンと何かが切れたかのように怒りで満ち溢れ、初めに自分が行くと言った。それに逆らえず、他のメル達は彼女に先鋒を譲る。
「メル、スノウ!! チェスの兵隊ビショップ三人衆の一人、エモキス!! 試合開始!!」
2014.11.09
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