雨色 | ナノ
15

「熱い? ねえ、熱い?」

ハルキの杖から繰り出される炎に倒れる寸前のユーリは、小さな声を振り絞る。

「ネイチャーARM――レド・リング」

「なに?」

「氷の壁!」

ユーリの前に半透明で白い壁が作り出された。それは炎からユーリを守り、同時に鎖をも引き千切る。

「チェーンブレスレットが壊れた……炎もきかない……でも、」

「……やっぱり、硬度が足りない」

「今ので魔力、持っていかれちゃったね」

ニッと笑うハルキは魔力を練り上げ、力強い魔力をARMに注いでいく。それにユーリは嫌な予感を覚えてハルキと距離を取った。

「いい判断だけど、意味はないよ。ガーディアンARM、ペルーダ!!」

召喚されたガーディアンは、四本の脚を持つ蛇。その口から炎を吐き出した。ユーリはそれを間一髪で躱し、体勢を整える。

先制を許したばかりにダメージは大きく、砂漠地帯で絞り出すように氷の壁を出したせいか魔力の消耗が激しかった。元よりフィールドでは不利な彼女は、必死に考えを巡らせる。

「できれば、最初の方はあんまりARMを見せたくなかったんだけど……」

腰につけていたチェーンを外し、手に持った。

「なにゴチャゴチャ言ってるの。さっさと灰になりなよ!」

ユーリはハルキとの間合いを詰める。ある程度の距離を保ち、持ったチェーンを振りかざした。そんなユーリに構わず、ペルーダに攻撃の指示を送るハルキ。ペルーダの炎がユーリに向かっていく。

「自分から近づくなんて、ばか」

ハルキはニコッと笑う。

「スプラッシュ!!」

しかし、ペルーダの炎は消えて、代わりにペルーダとハルキは水を被った。勢いがあったせいか、少しのダメージを食らうが、どちらかと言えば何が起こったのか分からないといった様子で佇む。

「なにこれ……水?」

「炎は水に弱いでしょ」

「でも、あなたは氷使いだったはず」

「氷使いだって水を使うの」

「ふーん……まあいいや。ペルーダ、今度こそ燃やし……えっ!?」

指示をしようと腕を振り上げた瞬間、ハルキの全身に痺れが走った。手足の感覚が無く、立っているのもやっとの状態で動けなくなっている。術者と同じく、ペルーダも痺れて動けなくなっていた。

「このARM自体に殺傷能力はない。でも、かかった相手は痺れさせる!」

「くそっ……こんな手に引っかかるなんて……!」

「今度は私の番だね……ガーディアンARM――フローズ!!」

その場に白くて大きな竜が現れる。砂漠地帯だと言うのに、一気に周りの空気を冷やしていった。ユーリもハルキも吐いた息が白くなっており、遠くで見守っているスノウ達も自分で自分を抱きしめる。

冷たい空気に凍り付いていくペルーダを見て、ハルキは流石に危ないと感じたのかペルーダをARMに戻した。そして新たなARMを取り出して発動する。

「フレイン!!」

炎を纏い、炎の翼を持つ人型のガーディアンが現れた。赤やオレンジの色を持つそれは、ハルキの指示に従いユーリに攻撃する。

「その子があなたの一番のガーディアンね……でも、残念だな」

翼から炎が放たれるが、フローズの吐息でそれらは凍っていき、ついにはフレインそのものも凍らせてしまった。

「まさか……炎を凍らせるなんてそんなこと……」

「できるはずがない? でも、できちゃった」

今度はユーリがニッと笑う。

「フローズ、コキュートス」

氷の竜が全身を光らせると、地面が少し揺れたかと思えば地面から尖った氷が突き出し、ハルキ目掛けて攻撃していった。それに耐えられなかったハルキは倒れ、気を失ってしまう。

「勝者! メル、ユーリ!!」

「よしっ!」

ポズンの声が響き、ユーリはグッと拳を握った。

ボロボロになりながらスノウ達の元へと戻れば、心配そうに駆け寄ってくるスノウに笑みを見せる。

「大分ダメージが大きいわね」

「でも勝ってよかった!」

「一時は冷や冷やしたけどなー。ユーリちゃん、相手の攻撃受けてばっかりでどないするんかと思ったわ」

「あはは……次はドロシーだね。頑張って」

「ええ。あんたは少し休んでなさい」


2014.09.07

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