あなたが好きなのです | ナノ

「じゃあ頼むよ」

「うん」

何だろう。前にもこんな会話したような気がする。というか、書類整理が終わってからARMの調達に行くと言う場面を前にもした気がする。ファントムに指定されたARMを取りに行くのは初めてじゃないのに、今日やった行動全てが前にもやったような気がして。

「そういえば、アオイ」

「ん?」

「君の髪ってそんなに短かったっけ? 切った?」

「いや……私はずっとこの髪型だけど……」

え? 何で? ある程度伸びたら切る、の繰り返しで殆ど髪の長さなんて変わってないはずだ。とくにファントムの前では。

「ごめん、ごめん。何だか髪が長かったような気がしてね。僕の気のせいだったみたいだ」

「そう……」


髪の毛……確かに自分で触れる時、少し短いことに驚く時がある。私の髪はこんなに短かっただろうか。

「まさかこの歳にして抜け毛や切れ毛が酷いんじゃ……」

「何か言いました?」

「い、いや……」

ARMの調達はロランと一緒だった。彼はファントムの命なら何でも聞くような人間だから、例えビショップの私と一緒だろうが何だろうが断らなかったのだろう。

「アオイ、でしたよね?」

「うん」

「最近ファントムやペタさんの仕事を手伝ってるって聞いてますよ」

「あぁ……」

「ロラン……さん、はファントムの命令は絶対に背かないんだってね」

「呼び捨てで構いませんよ」

くす、と笑って私を見た。確かにさん付けで呼ぶのは違和感がある。彼も私のことを呼び捨てにしているし、お言葉に甘えるとしよう。

「ロランがファントムの命令に背かないのは、やっぱり尊敬しているから?」

「そうですね。それに、彼の命令に背く必要が無いからです」

「そう、なんだ……」

ペタといいキャンディスさんといい、チェスの兵隊のナイトクラスは皆ファントム大好き人間なのだろうか。階級が上がる基準は強さだった気がするんだけど。

「あれ……?」

何で私、ファントム大好き人間の話でキャンディスさんの名前が出たんだろう……。噂で聞く程度なのに。この間すれ違った時に違和感を覚えたから?


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