あなたが好きなのです | ナノ

「今まで愛した人達は皆、自分を気味悪がって突き放した」

「何を……」

「こんなにも愛していると言うのに、自分の愛は相手に一ミリも伝わって無くて、だけどそんな自分でもいつか愛してくれる人がいると信じていた」

「あなた、どうしてそれを……!」

「後にも先にも、これ以上愛する人なんて現れない。そう思っていた彼に気持ちを伝えたい。でもまた気味悪がってしまうかもしれない。彼は私を愛してくれないかもしれない」

「やめて!」

「私は異常だ。私の愛情は異常で、他人には理解してもらえないものだ。例え好きになってくれる人がいても、愛してくれる人なんていない」

「いや……!」

「こんな私は愛される資格なんてない」

「やめてよ!」

耳を塞いで俯いてしまった。フルフルと肩を震わせて、今まで私を殺してきた人間か疑ってしまう。喧嘩を売りにきたけれど、私が思う以上にこれは本人にダメージを与えてしまうらしい。

「もう、やめて……」

「受け入れられないのが怖くて、だけど取られるのは嫌で、だから邪魔なものを消してしまえばいい。この世で自分と彼の二人きりなら、きっと彼は私を見てくれる」

「聞きたくない……」

「私にはあなたのその気持ちが、ほんの少し分かるよ」

「え……?」

「私はあなたのように可愛らしい容姿も声も無いし、異常なまでの愛情も無い。私にはペタを魅了する程の魅力は無い。だから羨ましい」

だから憎らしい。

「この世に私とペタの二人きりなら、ペタは私を見てくれるのかもしれない。でもそれはきっと、恋とか愛じゃないんだって思う。だから私は今この時、奇跡のように出会ったペタが好きだよ」

ペタが私を見てくれなくても。嫌っていても。それでも私はペタが好きだ。はっきりとそう言える。胸を張って、あの人は私の好きな人だ、と。

「本当、あなたから売られた喧嘩は苦しいわね……」

泣きながら笑みを浮かべる姿は、意思の無い表情と打って変わってとても人間らしいものだった。

「どうして私の気持ちが分かったの?」

「殺される前に、あなたの魔力か何か知らないけれど感じ取れてしまったのよ。繰り返す空間にいて変な能力でもついたのかと思って驚いた」

「そう。やっぱり私、あなたのこと嫌いだわ。とっても憎い」

「憎くて結構。私もあなたのこと大嫌いだから」


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