あなたが好きなのです | ナノ

「次はどうするんだ?」

「そうね。そろそろ終わりにしようかしら」

「それは、もしかしてペタがお前のことを……」

「違うわよ」

何度も何度も繰り返してきて分かった。私が異常なまでに愛していた彼だったからこそ、彼の気持ちが分かってしまう。繰り返してきた中で彼は一度だってあの子を見捨てることはしなかったのだ。彼は私と同じように、異常なまでにあの子を愛していた。

どうして? とか、何であの子なの? とか色々思うことはあったけれど、私が運命さえ感じる程に彼を愛したことに理由なんて無いのと同じで、きっと彼もそうなのだろう。人が理解できる理由なんて無くて、きっかけなんて些細なもので、いつの間にかその人に夢中になる。私もそうだもの。

「きっと次で終わるわ」

「え?」

「そんな気がするの」

「お前の第六感か?」

「女の勘よ」

何度繰り返しても見捨てないペタと、何度繰り返してもペタへの感情に気付くあの子。ペタはあの子の感情を知っていて、だけど気持ちやその理由までは知らない。あの子はペタの感情を知らなくて、だからこそ告白をして私に殺される。ペタの前で。そうすることによって消されても消えることのない記憶を刻み付けようとしていたのだ。

私が即座に毒殺したことによって、あの子は自分に記憶があると気付かれた、と思っているはず。ならば次で終わるだろう。もう何度も繰り返したこの一週間も、あの子を殺すことも。


* * * * *


どうして今まで忘れていたのだろう。私はあんなにもペタが好きで、ただ傍にいられるだけで幸せだと思っていたなんて。それにしても今日見た夢が始まりだとするなら、もしかして回避方法は無かったのだろうか。それとも私が何もしなければ問題無いのだろうか。

例えば何もしなかったとして、繰り返すことなく一週間を過ぎ去って無事平和に暮らすことが出来るのだろう。他の人に迷惑をかけず、ファントムの世界を浄化すると言う目的も達成されるはずだ。正解はそれなのかもしれない。でも私は、私の気持ちを優先してもいいだろうか。我儘で、幼稚的な気持ちだけれど、それでも優先していいだろうか。

「まぁ、後で謝ればいいよね」


食事は残念ながらパン一枚で我慢しよう。はしたないが歩きながら食べさせてもらう。野菜と焼いた玉子を乗せて二つに折るように挟んだ。それを片手に持ち、もう片手に牛乳を持てば完璧だ。

食べながら廊下を歩けば通りかかったロランに驚いた表情をされた。まだ一週間の最初だから会話を交わすことは無かったけれど、明らかに私を気にしていたようだった。もし食べ物を零していたならあとで制裁でも何でも受けよう。

最後の一口を放り込み、良く噛んで飲み込んだ後に牛乳を流し込めば朝食終了。空いた瓶は後で食堂に捨てに行くとして、食事を終えた後、空の瓶を持ちながら愛しい人に会いに行くなんて私くらいなものだろう。付き合ってるならまだしも、付き合うどころか気持ちも伝えていないのだから。

ペタはもう私の気持ちを知っているのかもしれない。記憶が殆どあるようだし、私が覚えていない時のことまで知っているのかもしれない。それでも今回の一週間ではまだ私の気持ちを一ミリも伝えていないのだ。だから私は何度殺されようとも、何度同じ日々を繰り返されようとも、何度記憶を消されても、ペタに気持ちを伝え続けよう。

「ペタ、入るよ」

もう何度も開けた扉にノックをしてからそう告げる。中から入れと言う声が聞こえて扉を開けた。起きたばかりか、それとも仕事の用意をしていたのか少し驚いたペタが私を見つめた。今までだってこんなに早く執務室に来たことなんて無いだろう。それが例え、告白する為だとしても。


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