あなたが好きなのです | ナノ

「私は終わったし、次の仕事あるから」

「あぁ、御苦労だな」

「じゃあまた明日」

思ったより早く書類整理が終わり、次の仕事であるARMの調達に行こうとペタに軽く声をかけてから部屋を出れば、ふと前にも似たようなことがあった気がした。書類整理なんて毎日じゃなくても結構前からやっていたことだし、同じように声をかけたこともあるだろう。だけど「また明日」という言葉がやけに脳内をぐるぐる回る。また明日、と言ってその明日が来ないような気がして、本当は今すぐに何かを言わなければいけないような気がして、だけどそれが何だったのか分からなくて、ただ薄暗い廊下を歩いた。

「そういえば、ペタは何にソワソワしていたんだろう……」

ファントムと何か約束でもあったのだろうか。ペタが落ち着かないなんて余程のことだろうし、話しくらい聞いても良かったかな。私が出来ることなんて殆ど無かったんだろうけれど。でも少しくらい、役に立てたかもしれない。

「何で役に立ちたいなんて思ってんの?」

思わず自分自身に問うてしまう。そこで自分が独り言を呟いていたことに気付いて恥ずかしくなった。一人だったから良かったものの、誰かに聞かれたら……それがハロウィンやイアンだったら宴会のネタにされるところだった。

いや、私はビショップだけどイアンとそこまで仲良くないし第一彼はルークのはず。それにナイトのハロウィンなんて話したこともないはずだ。

「あ……」

「え……?」

前からやってきたキャンディスさんが私に気付いて声をかけようとする。けれどすぐに不思議そうな顔をして通り過ぎて行った。キャンディスさんとは顔を合わせたことくらいはある気がするけど、話したことはないはずだ。彼女が私に用があることもないはず。だけどやけに何かを話したそうに声をかけようとしていたから、仲の良い人と見間違えたのだろうか。

でも、私はキャンディスさんと話したことがある気がするのは何故だろう。



はじまりの合図


2013.06.03

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